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男VS半精霊&ダンピール 決着

「御二方のお名前を聞いてもいいっスか?」

「なんの為に」

「あ、呪術とかに使うわけじゃないっスよ? 俺苦手だし。たださ」


 男が短刀を両手に構える。


「強い奴の名前は覚えておきたいっていうか……、名乗りみたいなの? 一応敬意って奴っスかね」


 先程の狂気を感じさせる笑顔から一転、真っ直ぐな、誠実さを湛えた瞳で男は2人を見つめる。


「俺の名前はトラキア・バーバリアン。主の命により"闇の半精霊"、"ダンピール"、そして"巨人の末裔"を捕らえに来た! だが俺は1人の人間として、君たちと戦いたい!」


 君たちの返答は


 その言葉に、ジルヴァラとシャリアルは一瞬目を合わせる。そして


「俺の名前はジルヴァラ、吸血鬼(ヴァンパイア)の父と人間の母の間に産まれた半吸血種だ」

「ボクの名前はシャリアル・ナハトロッテ! 闇の上位精霊である父と人間の母の間に産まれた半精霊だよ!」


 ジルヴァラとシャリアルは好戦的に笑い、トラキアと同じく武器を構える。

 別に戦いが好きなわけじゃない。ただ、目の前の男に乗せられただけだ。

 どうしようも無く戦うことが好きなのだと、全身でそう訴えてくる彼に何故だか少し絆されてしまっただけなのだ。

 だって彼の瞳はどうしようも無く真っ直ぐで、まるで子供のようだったから。


「──行くよ!」


 真っ先に動いたのはシャリアルだった。

 彼女の呼び声に答えて地面が黒い沼へと変わり、そこから次々と蛇が飛び出してくる。中には彼女の後ろに控える大蛇サイズのものまで。

 痺れた腕を記憶を頼りに動かし蛇を捌く。先程とは桁違いの勢い、だからこそ見えてくる彼女の限界。

 シャリアルの息が上がっているのが見える。きっと彼女は短期決戦へ持ち込むつもりなのだ。


(ジルヴァラはどこだ……?)


 彼女の隣に居たはずの彼がいない。視線を動かして辺りを見渡すがその姿はどこにも見えない。


「下だ」

「!」


 地面だった足場が黒い沼へと変わり足をとられる。すぐさま体勢を立て直すがその一瞬が仇となった。

 沼から飛び出したジルヴァラの剣がトラキアへと迫る。


「っ!!」


 咄嗟に回避するが間に合わない。ジルヴァラの放った一閃は肩へと深く突き刺さった。


「心臓を狙ったのだが…よく避けたな」

「ほんと、自分でもそう思うッスよ……」


 肩を抑えて距離を取る。もう左腕は使い物にならないだろう。

 だがここで黙ってやられるわけにはいかない。


「"ε(イプリシス)"!」


 肩を刺された時に落とした短剣、それは今ジルヴァラの足元にある。

 男の呪に反応したそれが強烈な閃光と共に爆発する。


「なっ!!」


 ジルヴァラの片足が爆発の衝撃で飛び散る。しかしそれ以上にジルヴァラにダメージを与えたのは閃光の方であった。


「いくら陽の光を克服したって言っても、多少は効くんスよね!?」

「クソッ」


 太陽の光と同じ性質を持つ光を至近距離で浴びたことにより、脳の働きが鈍る。混乱する頭を何とか正常に戻そうと躍起になっている隙に、トラキアは懐から短刀を複数取り出しジルヴァラへと投げつけた。


「ぐっ!」

「"ε(イプリシス)"!!」


 刺さった短剣から閃光と笑劇が放たれる。ジルヴァラの身体はあちこち吹き飛ばされ、見るも無惨な姿にとなっていた。


「舐めるな……!!」


 片足は吹っ飛んだ、再生には時間がかかるだろう。

 右腕はダメだ、どうなっているのか見えないが感覚が無い。

 左腕はどうだ、指が3本残っている。剣を握るのに支障はない。

 右目が見えない。閃光に焼かれたか爆発で吹っ飛んだか、どちらにしても回復にはどのくらいかかるか分からない。


「ジル!!」


 トラキアに向かっていた蛇がジルヴァラへと向かう。だがそれは襲う為ではない。

 蛇が形を変え、ジルヴァラの吹き飛んだ部位を補う。


「助かる!」


 これなら動ける。

 残った片目でトラキアを睨みつける。その一瞬、トラキアの動きが止まった。

 混乱の精神魔法、本来目を合わせて扱うそれは睨むだけでは効果が薄い。

 だが構わない、この一閃を叩き込む隙さえ出来れば!


「まだまだ……っ!!」

「させないよ」


 それでも何とかジルヴァラを迎え撃とうと再び短刀を取り出すトラキアの背後から、突然少女の声が聞こえた。

 それに反応する間もなく、首に小さな痛みが走る。


「なっ……が………!!」

「噛むのは吸血鬼の専売特許じゃないよ?」


 首元から走る痛みと痺れ、とてもじゃないが体勢を保っていられない。

 痛みに膝を着くトラキアに背後から抱きついたシャリアルは薄く笑う。半精霊の魔力を直接流し込まれたのだ、一般人なら気絶してもおかしくない。

 膝に短刀を突き立て正気を保とうとするが、それよりも闇の魔力の痛みの方が強い。


「終わりだ」


 ジルヴァラの剣が、今度こそトラキアの胸を貫いた。

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