男VS半精霊
「"破裂影"!」
「おっと危ない」
半精霊の呪に反応した蛇が次々と爆発する。大した威力は無いが、闇の力は少しの傷からでも人間の身体を蝕む。マトモに喰らうのは悪手だ。
爆発したそばから新たな蛇が次々と召喚される。既に地面は蛇の海だ。
「全くキミの魔力量はどうなってるんスか?」
「まだまだいけるよ! そーれ"破裂影"!"破裂影"!"大破裂影"!!」
バックステップで爆発を避けるが、避けた先でも直ぐに爆発が起こる。紙一重で回避はしているものの足も踏み場もないとは正にこの事だ。
この蛇は思考を持たない。闇の力で形成された彼らは召喚主の命令に従って敵を攻撃する、故に動きは単調だ。
爆発に紛れて襲い来る蛇をナイフで切り裂き蹴り飛ばす、この程度の雑魚なら何匹いても同じだ。だが
(厄介なのは爆発、そして……)
楽しそうに呪を唱える半精霊を守るように鎮座する真っ黒な大蛇。戸愚呂を巻いて彼女の傍に侍るこの魔物がいる限り、下手な手出しはできない。
これがただの蛇なら、もしくは闇以外の力で生成されているのなら話は違った。無傷とはいかないものの直ぐにでも大蛇を殺し半精霊を確保出来ただろう。
「闇の力ってのはほんっとに面倒っスね!!」
「えっへへー、ボクの大蛇かぁいいでしょ?」
その言葉に嬉しそうに目を細める大蛇、間違いなくこの蛇には自我がある。
闇の力は猛毒だ。それはあらゆる毒への耐性を持つ自分にも効く、防ぎようのない毒。
いや、正しくは毒ではない、闇の力はあくまでただの力。だが闇への耐性を持たない人間はその力に耐えられない。
(初めに俺を襲ったのは、あわよくばそれで仕留める為?俺の方が厄介だと理解していて、実力で勝るダンピールではなく半精霊を宛てがった)
再生してはダンピールに手足を切り落とされているリーダーを横目で見る。
(ダンピールならリーダーをほぼ無傷で制圧できる。これが半精霊だったらお互い無傷では済まなかった。……そして最初からダンピールと俺が戦っていれば、ダンピールを無傷で済ませることも無かった)
俺が半精霊に迂闊に手を出せないのを利用して、半精霊が時間を稼いでいる間にリーダーを撃破。その後ダンピールと半精霊の2人がかりで俺を制圧する、確実な安全策。
ダンピールがあっさりあの3人を捕らえたことも引っかかる。あの3人は遠くで獲物の捜索をしていた、ダンピールにその存在を把握する事は出来なかった筈だ。それなのにダンピールは、俺に対する不意打ちが失敗したと判断するや否や、すぐさま彼らの捕獲へと向かった。まるで初めからその存在を知っていたかのように。
(的確な状況判断、優秀な情報収集能力、そしてそれを元にした戦術……)
恐らく、まだ仲間がいる。
情報を集め、彼らに指示を出したものがいるはずだ。
今回の目的は闇の半精霊、ダンピール、そして
「巨人の末裔…」
彼らと行動を共にしている筈なのに、先程からずっと姿を見せない。
巨人の末裔には謎が多い。そもそも巨人自体が御伽噺の生き物、その末裔がどのような力を持っているかは全くの未知数。
頬に痛みが走る。手で触れれば血が着いた。どうやら破片を食らってしまったらしい。頬の感覚が無くなっていくのが分かる、きっと直ぐに全身が麻痺するだろう。
不意に背中に衝撃が走る。
咄嗟に受身をとり振り返ると、リーダーを制圧したダンピールが此方に足を向けていた。
蹴られたのだと理解するのは早かった。
「考え事か? えらく余裕があるんだな」
「ボーッとしてるとバン☆ しちゃうよー?」
「……あー」
ピンチだ
リーダーも仲間も殺られた、闇の力を食らった、殆ど無傷のダンピールが参戦した。
これ、やられるかも
笑みが漏れる
楽しい、楽しい、楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい
血が流れるのが楽しい、痛みが走るのが楽しい、殺意が楽しい、殺し合いが楽しい
「そうッスよねー、あーそうだ、考えごとなんてするだけ無駄だ」
俺は何のために戦う?
「楽しいから」
元々考えるのは苦手なんだ、そんなのは別の奴に任せればいい
「あははは! 久々に燃えてきたッス!!」




