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混血

「着いた…!!」


 出発してどの程度の時間が経ったのだろうか。既に日は傾き始め、辺りを赤く染めている。

 そして目の前の湖、その周りに広がる白い花畑も同じく赤く赤く染められていた。


「綺麗だ…」


 口から感嘆の息が漏れる。

 森の中で不自然な程に開けた、しかし長い木の枝が上空を覆い上からは見つけられない場所。


「マスター、油断なさらぬように」


 リュツィのその言葉にハッとする。いけない、景色に見とれて試験中だと言うことを忘れていた。

 慌てて長く茂った雑草の中に身を潜める。リュツィが認識阻害の魔法を使ったのでこれで見つかることはないだろう。

 後は夜を待つばかりだ。





 ー

 ーー

 ーーー


 身を潜めておよそ四半刻、リュツィと取り留めのない雑談をしながらクロック蝶の出現を待っていたグランは、ふと聞こえた声にそちらを向く。

 雑草が邪魔で姿は見えないが、どうやら5人ほどいるようだ。恐らく他のチームがやって来たのだろう。

 邪魔をされては困る。グランは息を潜め、彼らの会話を聞くことに集中した。


「見つかったか?」

「いやさっぱりだ。全くどこへ行ったんだ…」

「気配が多すぎるんだって、どれが対象の奴か分かったもんじゃない」

「かと言ってこの機会を逃せば次はいつになるか…」

「もう直ぐ夜になる、捜索は明日にした方がいいんじゃないか?」

「なるべく早くと仰せなのだ、のんびりしている暇はない」

「だが夜の"あれ"に勝てる奴なんていんのか?」

「それはそうなのだが…」


 やはり他のチームか、お題探しに躍起になっているようだ。

 ここへ来たのも偶然だろう。クロック蝶は警戒心が高い、人がいては姿を表さない。さっさと何処かへと行ってくれないだろうか。


「"シャリアル・ナハトロッテ"、"ジルヴァラ"、それに"グラン・ティタニアス"」


 突然彼らが自分たちの名前を呼ぶ。

 大方ヴァイオテールの悪口でも言うのだろう、お題が見つからない苛立ちを自分たちに向けて発散するつもりか。


「こいつらはただでさえ厄介なのに、夜になるとジルヴァラが本来の力を発揮する」

「"混血"かー、めんどくさいッスね」

「日の高い間はシャリアルも弱体化する。やはり行動するなら夜が明けてからだ」

(……ん?)


 なんだか話がおかしいような気がする。気のせいだろうか?

 その言い方だとまるで……


「"闇の精霊種"、"ダンピール"、"巨人の末裔"。レア素材ばっかッスねぇ。そんなの集めてウチの主は何をするつもりなのやら」

「無駄口を叩く暇があるなら探せ。時間は限られているんだぞ」

「はいはいっと、じゃあ行きますか」

「生徒がこの森に滞在するのは最大3日間、なんとしてもこの3人を見つけ出し連れて帰るぞ」

「了解!」


 その言葉を最後に気配が消えた。


「………」

「先程の人間、どうやら生徒ではないようですね」


 ……聞いたことがある、シャルは精霊との間の子なのだと。ジルが夜行性なのもダンピールだとしたら納得だ。彼らは夜の住人、日が昇っているうちは外には出てこない。

 この世界、人と人外種の混血は珍しいものの全くいない訳では無い。大方はエルフやドワーフ等の亜人種との混血だが、精霊や吸血鬼の子供も長い歴史の中で度々現れている。

 だが


「……巨人の末裔?」


 巨人

 聞いたことがある。遠い昔に神とこの世界の支配権を争い、そして敗れた古の種族。

 戦争に敗れた時に絶滅したと言われている幻の種族だ、だが何故そんなものの名前が出てくるのだろうか。

 それにあの言い方だと、まるで自分がその巨人の末裔と言っているようではないか。


「おや、もしかして知らなかったのですか? ご自身が巨人の力を持っていることを」

「……え?」


 猫の姿をしたリュツィが、その不思議な金色の瞳でグランを見つめている。

 よく見たら金色に差し色がある。八芒星の瞳孔に指すように、四色の光が……


「マスター、貴方は巨人の末裔です。既に失われた力を唯一取り戻した者なのです」

「でも、僕の両親はそんなこと…」


 もし自分が巨人の末裔ならば、両親のどちらかが巨人の末裔という事になる。

 でもそんな話は聞いたことがない。それにもしそれが事実なのならば、親が自分を気味悪く思う筈がない。


「……マスター、貴方は先祖返りなのですよ」

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