ルーチェルという名の少女
金髪縦ロールのハーフツイン、白い肌に紫の瞳。いきなり目の前に現れたのは、華やかな美貌を持つ美少女だった。
「…? その紫と灰色のローブ、初めて見ましたわ。もしかしてヴァイオテールの方かしら?」
「……だったら何?」
少女の言葉にぶっきらぼうに返す。彼女は敵だ、馴れ合う必要はない。
グランの返答にワナワナと震え出した少女に油断せず身構える。
「………ほ、本当に存在していたのですね!!」
「!?」
一瞬だった。
グランは気がついたら目の前の少女に手を握られていた。
油断はしなかった。距離もあったはずだ。なのに目で追うことすら出来なかった。
固まるグランを他所に、謎にテンションを上げた少女は矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。
「私ヴァイオテールの方と1度お話したいと思っていましたの! 皆様変わった魔法を使われるそうですね? 魔法を使えない方もいらっしゃるとか? とても興味深いですわ、数人の選ばれた者しか入ることを許されない神秘の寮……ワクワクが止まりませんわー!!」
「落ち着いて!」
手をブンブンと振りながら興奮する少女……確か名前は
「はっ! 私ったら礼儀知らずな……。こほん、申し訳ありません取り乱しました。改めまして」
少女が一歩引き丁寧に頭を下げる。とても綺麗な動きだ。
「私の名前はルーチェル・ディアメント。ディアメント家の第2子にしてアスレピーカ寮に所属する者。貴方のお名前をお聞きしても宜しくて?」
「ぼ、僕はグラン・ティタニアス。君の言う通りヴァイオテール寮の1年生、です……」
「グラン・ティタニアス…聞いたことがありますわ、魔法が使えない変わりに身体が秀でてらっしゃるとか」
「き、気味悪くはないの? 僕のこと」
「? 何故ですか?」
ルーチェルは心底不思議そうに首を傾げる。
「この学園に通っている以上、私たちは平等ですわ。皆それぞれ違った力を持つ、それを尊重するのがそんなに可笑しいことかしら?」
「いや、その通りなんだけど…」
「もしや魔法が使えないことでからかわれたことが? そんなもの気にする必要ありません。貴方は貴方ですもの」
その言葉に驚いたグランは思わずルーチェルをじっと見つめてしまう。
今まで自分に優しかったのは同じ寮の人達だけだ。他寮生は僕を自分を含めヴァイオテールを見下す人達ばかりだったのに……。
「ゆっくりお話したい所ですが、私も役目があります。貴方には退場して頂きますわ」
しかしその感動は一瞬で引っ込む。
そうだ、彼女は今は敵。お互い蹴落とし合うライバルだ。
ルーチェルが構える。彼女の所属する寮は身体強化を得意とする者が多い。そして先程の動き、間違いなく彼女も身体強化を得意としている。
「では……いきます!」