敵との邂逅
グランの拳が当たった所から、ひび割れが蜘蛛の巣上に広がっていく。
「な、なんだ!?」
そしてそれは大きな地割れとなって生徒たちを飲み込んだ。
「よしっ!」
久しぶりにそれなりの力で殴ったが、どうやら筋力は衰えてなかったようだ。何人もの生徒が登るのに苦労したり、また助け出そうとしているのを背にグランはシャル達と共に走り出す。
「馬鹿力……すごい」
「魔法無しであれって…今度グランの身体調べてみてもいい? 大丈夫痛くしないから」
「こ、怖いからやめてよ!」
魔法使いは、大抵魔法に対する耐性を持っている。グランのように殆どの魔法が聞かないのは稀だが、それでもそこらの魔法じゃびくともしない者もいる。
なのでグラン達は物理攻撃を取る事にした。
地面を割る程の魔法は発動に時間がかかる、だがグランの馬鹿力ならあれぐらい簡単だ。更に相手はグランの事を魔法の使えない落ちこぼれだと思っている、まさかこんなことをして来るとは夢にも思わないだろう。
案の定、浮遊の魔法を使っていたシャル達と違い、地割れの対策などしていなかった生徒たちは殆どが足場を崩されスタートを大幅に遅らせることとなった。第一試験はお題を探し出すまでの時間も採点要素の1つ、彼らはその時間を無駄に消費することになる。
「……じゃあここで予定通り二手に別れよう、クロック蝶が現れるポイントは全部で三つ。まずはその内の二つを潰す」
「頑張ってねグラン! リュツィ、グランを任せたよ!」
「そっちも気をつけてね!」
「お任せ下さいシャリアル嬢」
2人はそのまま上空へと登っていく。彼女たちの目当ては崖上の小さなスペースにある湖だ。
自分も方位磁石を見ながら地図を確認する。場所はここから北西に進んだ所、このペースだと10分もかからないだろう。
「到着しましたら消音と姿隠しの魔法を使います。くれぐれも後を付けられないよう、お気をつけを」
「大丈夫、分かってる」
実力テストのグループ人数は最大で五人。中にはその内の一人二人を他グループの妨害役に回す所もあるらしい。
そいつらに付けられて妨害されるのは避けたい。なるべく静かに、かつ急いで目的地へと向かう。
しかし
「ちょっと待ちなさーい!!」
「!?」
突然前方から人影が飛び出して来た。
「私の名はルーチェル・ディアメント! アスレピーカ寮の1年生にして、妨害役を託された貴方の障壁となる者! さぁ名乗りなさい、ここを通るなら貴方は私の敵よ!」