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嵐のような少女

ようやくヒロイン登場です

「ねぇ聞いた?」

「うん、なんか教室に倒れてたらしいね…」

「魔力全部無くなってたんだって」

「えぇ怖…原因ってわかってるの?」

「魔法生物に襲われたって聞いたよ」

「え? 禁呪を試そうとして失敗したんじゃないの?」

「でも自業自得だよね」

「ライドネたちって嫌われてたもんね」


 あちこちから聞こえる噂話を遮る為にフードを深く被る。

 あれから3日経った。魔力を失ったライドネたちは退学となり、原因は未だ解明されていないらしい。


「大丈夫ですよ、バレるようなヘマは致しません」

「そういう問題じゃないんだよ…」


 猫に変化したリュツィが囁いてくる。そう、何故かこの悪魔、契約が達成された後もずっと着いて回っているのだ。


「あの契約は主従の契約ですよ、そう説明したじゃないですか」

「サラッと心読むの止めてよ!」


 どうやら僕が描いた魔法陣は悪魔に望みを叶えてもらう為の簡易召喚ではなく、主従契約を結ぶ為の高等魔法陣だったらしい。地下室にあった魔法陣の本の通りに描いたのだが、なんでそんな本が地下室にあったんだ。心当たりが無いことは無いが。


「それにしてもマスター…」

「な、なんだよ…」

「本当に人間のお友達がいらっしゃらないのですね」

「ほっとけ!」


 なんで悪魔にそんな事を言われないといけないんだ、悪魔にすら心配されるほどのことなのか。


「だってここ数日、常に1人で誰とも話していらっしゃらないじゃないですか…。ほら皆さん大体同じ寮の方で仲良くしてらっしゃいますよ、マスターもせめて同じ寮の方とは……おや?」


 リュツィが不思議そうに周りを見渡す。


「そう言えばマスターと同じ寮の方がいらっしゃいませんね?」


 各生徒は幾つかある寮のどれかに入っており、誰がどの寮かは制服の色で判別することが出来る。

 しかし周りにグランと同じ灰色と紫の色合いを着た生徒は全くと言っていいほど見当たらなかった。


「あぁ…、このエルドラド学園には5つの寮があるんだ」

「ふむ」

「寮には得意魔法とか適正魔法とかで分けられるんだけど…」

「なるほど、魔法が使えないマスターが振り分けられているということは、即ちヴァイオテール寮は変わりも……得意魔法が特殊な方たちの寮だと」

「そこまで言ったならもう変わり者って言いきってよ」


 だがその通りだ。他の寮は1学年に大体100人から150人程が在籍しているが、自分の所属するヴァイオテール寮は全学年含め僅か15人の学生しか在籍していない。

 しかも自分と同じ1年生に限定すると僅か3人だ。この広い校舎の中では彼らと出会うことも難しい。

 それにそもそも…


「あー! 見つけた!」

「ん?」

「げっ」


 聞き覚えのある幼い声が廊下に響く。振り返ると、予想通り見覚えのある人物が此方へと走ってきていた。


 周りの生徒と比べても一回り小さい体に、袖が余ったブカブカの制服。紫のショートカットと桃色の瞳。そして彼女の1番の特徴である、頭から生えた小さくて黒い2本の角。

 小動物を思わせる小柄な美少女が、満面の笑みでグランへと勢いよく抱きついてきた。


「ここ最近会えてないから心配したんだよー! 大丈夫? 虐められてない? 生意気な奴はボクがぶっ飛ばしてあげるからね!」

「大丈夫だから落ち着いてシャル…」


 そう言うと彼女は不満そうに体を離す。

 この小柄な少女は正式な名前をシャリアル・ナハトロッテという。

 彼女はグランの数少ない同寮の同級生であった。

 人懐っこいシャルはグランにも常に親切にしてくれているのだが、常に明るく更にマイペースな彼女にグランは振り回されることが多く、グランは少しばかりこの少女のことが苦手であった。


「そう言えばグランを虐めてたあいつらのこと聞いた!?全く 悪いことばっかしてたからだよ!」

「そ、そうだね…」


 いきなりの話題にギクリと体が固まる。だがまさか自分が犯人ですとは言えない。言ってしまったら、きっとこの少女は自慢げに言いふらすだろう、ボクの友達が悪者を懲らしめたのだと。それは困る、というか嫌だ。


「ん? わぁーなになにその猫! 魔力あるね、使い魔?」

「う、うんそう! リュツィって言うんだ!」

「へぇ〜、ねぇねぇよく見せて?」


 しかしシャルの意識は直ぐに逸れた。これ幸いとグランはリュツィをシャルに差し出す。

 マジで!?という顔をしてこっちを見るリュツィに内心で謝る。自分の安寧のために犠牲になってくれ。


「かっわいい〜! 綺麗な子だぁ! あ、そうそう!」


 リュツィを弄り回していたシャルがパッとグランを見上げる。相変わらず話があっちこっちに飛ぶ子だ。


「今日は一緒にお昼食べようね! 珍しくジルも学校に来てるからさ! じゃあお昼になったら教室に迎えに行くね! じゃあね〜!」


 そう言って彼女は去っていった。残されたのはボサボサの毛並みを呆然と見つめるリュツィと半笑いのグランである。


「マスター、私に何か言うことは?」

「ご、ごめんなさい…」

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