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京なんとか

小さな灯りが一つだけ。


お城の奥の、暗い部屋。


白いテーブルの周りには、色とりどりのお嬢さま。


綺麗なドレスで着飾って、


顔突き合わせて、お喋りしたり。



でもそんなのは問題じゃない。


今考えるべきは、「一体私の腹にはどれだけ甘いものが入るのか」と「仮に全部を食べられないなら、どのお菓子を優先して食べれば最大の幸福が得られるか」の二つだけ。


テーブルの上には三段のやつの他に、マカロン、マシュマロ、みたらし団子……。


通常のお茶会を大きく逸脱した量と種類のお菓子がのっかってる。


多分これ、メイドさんの仕業だよね。私があんまし喋んなくてもいいようにって。


ありがとーメイドさん。


まあ喋るとかはどうでもよくて。


(どうする?どれから行く?)

とりあえず目の前に置いてあるってことは、マシュマロは確定だろうね。あんましお腹にもたまんないし。

(はい、マシュマロ確定。後は?)

気になってるのは、奥の方にある黄色い棒。あれってきな粉ねじりだよね?

(うん。多分そう。……あそこまで取れる?)

じっと見てれば誰かしら気づいてくれるでしょ。

(最中も食べたい)

じゃあそれも決定。かなり甘いし、後の方でいいかな?

(後の方……うん。後の方なのはいいとして、きな粉ねじりとどっちが甘いか分かんない)

あっ、あれ食べたい!オールドファションじゃん!

(いきなりドーナツ⁉︎美味しいけど、すぐお腹いっぱいになっちゃうんじゃない?)

だいじょーぶ。甘いものは別腹。

(全部甘いじゃん……)


自己紹介が終わったってことは、食べ始めていいってことでしょ。多分。


私は早速、平べったいお皿に盛られたマシュマロに手を伸ばす。さすがにこの短いスパンで三度も見れば分かる、これは色付きのお菓子だ。味も少々違ったりする。


両手を広げ、マシュマロをいっぱいに掴んで、口に詰め込みかけ……


危ない。


あんまりお上品じゃない動作をするとこだった。


近くの空のお皿(多分これが取り皿)に左手分をおいて、右手の中のマシュマロ数個を口に押し込む。


口の中がぎゅむぎゅむいって、とっても美味しい。


(色ごとに違うって言っても、結局一度に食べちゃうから分かんないんだよね)

それでいいの。幸せ。


昨日の夜は練習中寝落ちしたし、今日の朝はドレスやらで忙しかったから、おそらく24時間ぶりの食事だ。


久しぶりの運動と着付けで、だいぶお腹も空いていたところ。一品の分量をいつもより少なめにすれば、ひょっとすると全制覇も夢じゃないかもしれない。




「あ、あのー、メリア様。素晴らしいドレスですね。よくお似合いで、お綺麗です」


目に付いた謎和菓子に手を伸ばしていると、緑のドレスの子がこわごわ話しかけてきた。


なんて名前だったっけ。


(確かマ行系じゃなかった?)

それぱっと見のイメージでしょ。

(でもさ、この手の顔の子は大体マ行なんだって。前原とか、松本とか……)

ここ異世界。

(そうでした)


なんでもいいや。どうせ今日1日しか会わないのだ。


(して、これはどういう会話なんだろ)

いきなり褒められたよね。

(えーと、メイドさんがなんか言ってた気がする)

なんだっけ?お互いの装いを褒めあうんだっけ?

(言ってた気もするし……全然違った気もする)

どちらにせよ。

(何?)

そろそろ腕が疲れるから戻りたい。


そうだった、和菓子を取ろうとしてるとこだった。左手を支えにし少し体を浮かせて、右手はテーブルと平行にまっすぐ伸ばす。背が低くて、こうでもしないと真ん中辺のお菓子を取れないのだ。


(さっきからお菓子お菓子って言ってるけど、マシュマロもみたらし団子も、私にとっては主食でしょ?)

ほら、お茶会だから。ここでの主食は紅茶のはず。


テーブルの上をぎゅーって伸ばしてた手を戻し、椅子に座りなおす。


緑のドレスの子の方を向いて、


(こういう時って、褒め返す必要があるんだよね?)

うん。ルール上は。

(えっと……)

まあ、綺麗なドレス!みたいな?

(相手が先に言ってくれたのに、まあ、はどうなの)

えー?

(なんか呼びかけのイメージあるじゃん。褒められたんだし、先にありがとうございますから入るべき)


つまり、まず私はまずお礼を言って、それから相手の何かを褒めて……


だめだめんどくさい。


頭痛くなってくるから放棄。


たまごボーロをチロルチョコより少し大きいくらいにしたような見た目の謎和菓子を口に入れる。


ふむ。


あれだ、和菓子で正解ってことが分かった。


中に白あんみたいな何かが入ってるんだと思う。お土産の、ひよこだかうずらだかのやつで食べたことがある味。


(この手の和菓子ってほんと謎だよね)

甘くて美味しいからいいんじゃない?

(それもそっか)


袋に入ってないから名前も分かんない。


まあいいや。終わったらメイドさんに頼んで定期的に出してもらおう。最近の料理人さんは洋に走りすぎな気もするので、ここらでストップをかけておきたい思いもある。


一口サイズの謎和菓子はとっても甘くて美味しくて、はじめにとった分はすぐに食べ終わってしまった。


(……どうする?追加行く?)

いやいや。色々回るって言ってたじゃない。次は鈴カステラ行ってみよう。久しぶりに見た気がする。

(はいらーい)


謎和菓子は甘くて、この後鈴カステラって味するんだろうかと不安になりながら手を伸ばす。


手を、の、ば……


ぐぬう。


届かない。


自室で食べてた時は起こらなかった問題である。半身をテーブルに乗り上げたまま、かろうじて腕で姿勢を保つ。


(あ、これやばっ!私こんな重かったっけ⁉︎)

ううん、違う違う。きっと。多分、運動不足。そうに決まってる。そうだといいな‼︎


体を支える手がぷるぷる震えて、へにゃりと崩れそうになる。


やばいやばいやばい。


物理的に呼吸しにくい。こんなに力を込めたのは多分、床に花瓶を叩きつけた時以来。


「あうあ、わっわ、あわ」


その時、後ろで軽く結わえてた髪がはらりと解け、私の視界に映り込んだ。


真っ白な地の色。


ポイントは地の色ってとこ。


どんな仕組みなのか知らないけど、その上にカラフルな水玉模様がある。数百本単位で、同じような位置に色付きの箇所があって、そいつが忌々しくも完璧な水玉模様を描いている。多少違いはあるものの、5センチ大の水玉が髪の毛にぶつぶつと浮き上がっている。


生え際からそうなのだ。初めから髪の毛の生成にプログラムされているのだ。


……もっとも、髪の毛で済んだ私は幸運だったと言わなければならないのかもしれない。


仮面をつけて両腕に分厚い手袋をした二番目の兄とか、爬虫類系の翼(意味わかんない)と尻尾がついた一番上の兄とか、弟……あの子はどこだっけ?何かしらの異常があったはず。


人に見せられないような顔だったり、日常生活に多大な不便をもたらすようなパーツがくっついたりするよりかはずっとましなはずだ。


あいつらだって主人公ちゃん達だって髪の毛の色いかれてるし(単色か、多くて二色だけど)、水玉模様だって個性なのかもしれない。


最後は魔物であるお母さんと融合し、全身が変異して人ですらなくなるお父さんよりかは随分いい状態ではあると思う。


お父さんが喜ぶのも当たり前だ。要は自分の要素を多くて引き継いでくれたって事なのだから。


でも私は認めたくない。


私がこの世界で初めて壊した物は鏡だ。5歳だか6歳だか、とにかく積極的に引きこもる前の時期だからその辺で合ってると思う。


次に髪の毛。ハサミでずたずたにしてやった。


自分の体の一部だと認めたくなかった。刺激色のカラフルな水玉は、地の色がおとなしいだけ目立って見える。いつでも少しひんやりしていて、可愛い、とか素敵、とかの前に奇形の水生爬虫類を見たときのような嫌悪感を感じる。


太さは変わらないのにどうしてここまではっきり模様が浮き上がるのか想像もつかない。


ただただ気持ち悪い。こんなものが私の頭の奥深くまで食い込んで、そこから栄養を吸い取って成長しているのかと考えると頭をかきむしりたくなってくる。


頭皮がぞわぞわして、なにかの廃液にでもつけたのかってくらい毒々しい水玉模様の髪の付け根から嫌な色の液が染み出してる気がする。


やばい。久しぶりに意識したからかな?


急にスイッチ入った。


(だいたい、手の届く位置に他の人を四人も近づけて、その上で楽しく過ごさせようって事が間違ってるんだよ)

前世では確かに友達も数人いたけど。話しかけられたら時々返事してたけど。自己紹介だってもうちょっとましに出来て、そもそも学校に通えてたし、それはそれは今からは考えられないくらいの人々環境に身を置いていた私だけど。

(ちょっとブランクがありすぎたものね)

蜂蜜に入った薬の効き目も、そろそろ切れたことでしょう。薬でもなければここまで話せる訳ないし。


そうと決まれば。


私はお前らが憎い。いくら王命とはいえ、私にここまで近づいたお前らが憎い。まともな色の髪を持ってるお前らが妬ましいし、死んでしまえって思う。二度と私の前に顔を見せるな。


ここまで聞き取りやすく話すのも、初めましてが無いのも全部メイドさんか誰かの差金でしょ?あーいらいらする。別に悪いことじゃないけどそこまで私のことを考えて小細工を弄する誰かがいるってことにいらいらする。


ロクロを使うまでもない。私自らお茶会をぶっ殺してやる。


計算は一瞬。


四人の中の誰かしらには当たるだろうし、私は銀色で円柱の形で皿が三段のやつ(名前分かんないとこもむかつんだよ。お前も同罪、死刑)を握って、テーブルの上でぶん投げよう。


銀色の足をがしっと掴んで、右膝までテーブルの上に乗り出して、


「メリア様。これ、どうぞ」


目の前に差し出されたほっかほかの大判焼きに、思考がフリーズした。


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