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サファイアの執着

作者: 禍福凪

深くローブのフードを被る。遠くに聞こえるサイレンの音を聞き流しながら、足早に国境の壁に向かう。彼女の食卓に並ぶ今日の戦利品は、自分の持っている中で一等上等なコートで大切にくるんだ。生垣の陰に隠れ、人目を避ける。彼女はきっとお腹をすかせていることだろう。壁の穴を通り抜け、足早に帰路につく。しばらく駆け、国から離れた場所にある洞窟に入った。ほとんど光源のない中、手探りで進んでいく。

 その最奥の地底湖、ぼんやりとした青藍の光の中に彼女はいた。


「お待たせ」


 声をかけると、僅かにその華奢な肩が揺れた。しかし、こちらを振り向くことはない。私はコートを広げながら、その背中にひたすら言葉を投げかける。


「いや今日はね、なかなか大変だったんだ。国でもそれなりの大きさの美術館に行ったんだ。大きいだけあって、たくさん君のご飯になりそうなものがあったよ。その中でも選りすぐりの美術品を選んできたけど、気に入るといいな」


 コートの中から小さな絵画、彫刻などを取り出し、彼女の前に差し出す。彼女は緩慢な手つきで私の手から一つだけ取り上げ、まじまじと見つめる。御眼鏡に適ったのか、目を細めて小さな口元に持って行った。彼女の小さな体躯から発生しているとは思えないほど大きな音を立てて人類の宝を咀嚼している。私はその姿から目を離せずに、じっと彼女の食事が終わるのを待つ。ようやく彼女の手が空っぽになると、彼女はまた虚空を見上げ始めた。まだまだ他にもあるが、これは別の日に回すとしよう。


「おいしかったかい?」


 彼女は、私の存在など見えていないかのように全く反応を示さない。




 私は元々世界を旅する探検家だった。世界中の美しいものを探し、集めることを至上の喜びとしていた。この辺りにも、珍しい宝石が産出されるというので、一目見ようと訪れていた。深海のようにどこまでも沈んでいくような青色のその宝石は、ほとんど採り尽くされてしまって深い洞窟の奥にくらいしか残っていないそうだった。

 そうして出会ったのだ。美しく、冷たい彼女に。

 彼女の髪は、鈍いが話に聞いていた宝石のような輝きを放っており、細い手足は石膏のように白く、滑らかだった。ぽちゃん、ぽちゃん、と水滴の垂れる音のみが洞窟に響く中、彼女は一人倒れていた。半ば呆然としつつ彼女の顔を覗き込んだ際、お守りの代わりに身に着けていた精巧な細工の施されたブローチを落としてしまった。その音に反応したのか、彼女は薄く瞼を開き、ブローチに手を伸ばした。そしてそのまま口に運び、飲み込んでしまった。

 すると、じわじわと髪に光が宿り、ぱちりと目を開いた。私はその瞳を見て、この世で一番美しい宝石を見つけてしまったことに気がついた。そこで私が探検家を続ける意味はなくなってしまったのだ。

 それからというもの、私は彼女のためだけに生きることを決意した。




 何度も彼女に話しかけ、名前を尋ねたのだが、彼女は一切声を発してくれなかった。もしここにずっと一人でいたのなら、言葉が通じないとしてもおかしくはない。しかし、彼女はそもそも私と交流するつもりがないようだった。名前がないのは不便だろう、と私がつけてあげようとも思ったが、勝手につけるのも悪いと思い直し、心の中だけで、彼女のことをサフィーアと呼ぶことにした。

 そして、彼女と過ごしていく内に、徐々に彼女のことがわかってきた。まず、彼女は美しい物しか食べない。食べられないのか、食べないのかは不明だが、それ以外には興味を示そうとしなかった。しかも彼女の中でも価値基準があるらしく、ある程度一般的に美しいとされているものでも彼女の食指が動かないことがざらにあった。そんな気難しい彼女のために、私はたくさんの美術品を運んでくることにしたのだ。


「この間持ってきたのはあんまり好みじゃなかったのかな」


 私は彼女の側に積まれたまま残っている絵画や彫刻を見て呟く。彼女からの返事はもう期待しないことにした。彼女は暇そうに湖に足を伸ばし、ぱちゃぱちゃとぶらつかせている。元気そうではあるので、まだお腹が空いていないだけかもしれない。ふと、サフィーアの髪が乱れているのに気づく。


「少し失礼するよ」


 ポーチから櫛を取り出し、髪を撫で付ける。彼女は煩わしそうに眉をひそめたが、逃げることはなくそのまま私の手入れを享受している。初めて会った時、彼女の髪はかなりぼさぼさの状態だったのだが、それではもったいないと一番近くの国であるベッラツィオーネで普段入らないような店にまで行き、櫛を買ってきたのだった。奮闘の甲斐あって、彼女の髪は見違えるほどさらさらになった。


「よし」


 私が彼女の髪から櫛を離すと、彼女は湖の中に飛び込んだ。近くにいた私は逃げる間もなく水しぶきを浴びることになった。基本的に彼女は湖の側の定位置から離れることをしないが、稀に気まぐれで湖で泳いでいたりする。光輝く長い髪をなびかせながら、するすると泳いでいく姿はまるで天女のようだ。また、ほとんど感情を見せない彼女だが、この時ばかりはほんの僅かに楽しそうに見える。彼女が一体何歳なのかはわからないが、小さな子供がはしゃいでいるようでなんだか微笑ましく感じ、顔をほころばせる。

 しかし、まだ食糧の心配はないとはいえ、次の食事のための下見に行かなければならない。ベッラツィオーネには他国と比べ、美術館や博物館が多くはあるのだが、こうも何度も調達に行っているせいで警備が厳重になってしまっている。警備がまだ薄いところを探しつつ、何か別の方法を模索しなければならない。


「じゃあ、また君のご飯を探しに行ってくる」


 聞こえているかもわからないし、聞こえていたところでサフィーアに興味はないだろうが、一応声をかけてから洞窟を出る。既に日は沈んでおり、国に忍び込むには絶好の時間帯だった。

 探検家をやめてから、私はベッラツィオーネに国籍を持った。サフィーアの洞窟からも近く、食糧を調達するのにも都合がよかったからだ。何度も出入国を繰り返すことで余計な詮索をされることを避けるために、私は城壁に穴を空けた。幸い、この国は治安が良く、様々な場所で警備が甘かった。それを壊してしまったことに心は痛むが、サフィーアのためだ。仕方がない。


 私はほとんど物のない部屋に帰り、地図を広げた。国営美術館に忍びこめたことは大きな収穫だったが、もうあそこにはしばらく近づけないだろう。民営で、かつ小さなところならば、警備を強化する余裕もないかもしれない。そういえば、北の方に古い博物館があったな。一度、そこに赴いてみよう。

 次の目星をつけると、ぎしぎしと音を立てるベッドに寝転がった。月明りがレースカーテン越しに差し込んでいる。昔はこの光景にすら喜びを感じたものだが、サフィーアに出会ってしまってからというもの、何にも心が動かされなくなってしまった。彼女に差し出した数々の美術品を頭に浮かべる。一つとして忘れた物はない。あれらは後世に語り継がれるべき、人類の技術や、歴史の詰め込まれた物ばかりだった。決して、失われていいものではない。その価値は探検家だった私にもよくわかっている。しかし、それを、私が、この世から消してしまった。後悔はない。もし、あれらをサフィーアに差し出す前に戻れたとしても同じことをするだろう。そんな私が、罪悪感を持つ権利などない。わかってはいても、ぐるぐると頭を巡ってしまう時がある。そんな夜に私は何を心の頼りにすればいいかわからなかった。




 念入りな下見を経て、私は目的の博物館に忍びこんだ。夜間の警備員が一人しかいないことは事前の調査でわかっていたため、簡単に館内に入ることができた。高度なセンサーなども設置されていないため、あとはサフィーアの気に入りそうな物を持っていくだけだ。彼女は今まで宝石を食べなかったことがないので、できる限り宝石を持っていくことにする。ここには、彼女に似ている宝石もおいてある。私が来る前は恐らくこれを食べていたのではないかと推測している。もし、この推測が合っていたとしたら、彼女は久しぶりにこの宝石を味わうことができるのだ。喜んでくれるとうれしいのだが。未だ見たことのない彼女の笑顔を想像しながら宝石を懐にしまう。これだけでは心元ないので、他のケースの宝石にも手を伸ばす。これだけあれば、しばらくはもう調達する必要はなくなるだろう。少し気が緩んでいたのかもしれない。最後のケースを開けようとした瞬間、こちらに向かってくる足音がした。流石に姿を見られるのはまずい。ここに隠れたとしても、宝石がなくなっていることに気づいた警備員にすぐ見つかってしまうだろう。それならばいっそのこと、と窓ガラスを割って飛び込んだ。背後から何やら叫ぶ声が聞こえたが、無視して走る。ガラスの破片が腕や足に刺さり、ずきずきと痛むが、気にしている場合ではない。とにかく、サフィーアの元へ向かわなくては。近くでサイレンの音が鳴り響く。しまった、この近くは警察署があるのだった。いつもなら警備員に見つかるなんてへまはしないのであまり気にしていなかった。舌打ちをし、大勢の足音から逃げる。幸い、ここは抜け穴にも近い。どうにか城壁までたどり着き、はっと懐を見る。逃げるのに必死になっていて、宝石に気が回っていなかった。今すぐにでも確認したかったが、すぐそこで警官の話し声がしている状況ではそれも叶わない。今更ながら丁寧に宝石を抱え、抜け穴を通る。傷が思っていたよりも大きいらしく、だらだらと血が流れている。頭がぼんやりとしてきた。それでもこんなところで止まっていては捕まってしまうかもしれない。ぽつりぽつりと頬に感じ、見上げると厚い雲が空を覆っている。私は重い足を引き摺りながら、サフィーアの元へ急いだ。


 ぼろ雑巾のようになりながらも、洞窟の入り口に辿り着く。髪やコートから水を滴らせながら奥へと進んでいくと、耳慣れない音がした。人の声だ。低い、男の声だ。まさか、ここが見つかってしまったのだろうか。今日一番血の気が引き、大切に持ってきた宝石も全て投げ出して彼女の元へ向かう。あの国の人間だとしたら、彼女の近くにあるものが盗品だと気づいてしまうかもしれない。そうして、もし、彼女が捕まってしまったら。私が全て行ってきたことだというのに、彼女に罪を着せることになってしまう。それだけは絶対にだめだ。


「大丈夫かい!?」


 息を切らしながら最奥の空間に飛び込む。そこには見知らぬ男と向かい合って、笑顔を浮かべている彼女がいた。一度も、見たことのない顔だった。呆然としていると、男が声をかけてきた。


「もしかしてこの絵とか持ってきたのあんたか?」


 男は軽薄そうな笑みを浮かべながら片手で絵を掲げる。嫌な感じのする男だ。ぶっきらぼうに、そうだ、と返すと、男はにやにやしながら絵を置いた。


「オレ、この絵を見にわざわざベッラツィオーネに来たんだよ。それなのに盗まれちまったっていうんだから、オレはもう意気消沈だった訳。それがこんなところで見つかるなんてなぁ」


 この男は一体何が目的なのだろうか。私は捕まっても構わない。しかし、彼女も捕まえるつもりなら私は断固抵抗しなければならない。もし彼女の存在が明るみになってしまったら大騒ぎになるだろう。保護されるならまだいいが、人間に害のあるものだと認定されてしまった場合、獄中から彼女を救うことはできない。


「ま、そんな警戒するなって。目的の絵は見れた訳だからさ。寧ろこんな近くで見られてラッキーって感じ。サンキューな」


 私は黙って彼を睨み付ける。そんな私をサフィーアが睨み付けてきた。今まで私のことをしっかり見てきたことなどなかったのに。私は酷く動揺し、懐に唯一残っていた宝石を落としてしまった。からから、と彼女の足元に転がる。彼女はそれを目で追い、ゆっくりと拾い上げた。


「お、また持ってきたのか? 今度は宝石か。いいねぇ」


 彼女は自身の瞳とそっくりな宝石を、まつ毛に当たるほどの距離で見つめてから、ぱくりと一呑みしてしまった。彼女の喉が動くのに見惚れる。


「へぇ、なるほど、こういうことね」


 男は興味深そうに頷いて、先ほどの絵を彼女に差し出した。今宝石を食べたので、彼女はお腹いっぱいのはずだ。

 しかし彼女は迷いつつも男の手から絵を受け取り、ばりばりと食べ始めた。一度に、彼女の初めての行動をいくつも目の当りにして、私は混乱していた。


「お前は何者なんだ」


「オレ? 俺はシュピール。旅人兼詩人やってんの。あんたは?」


 私が聞きたかったことはそういうことではないのだが、この男が私の求めている答えを持っているとは思えなかった。溜息をつき、渋々名乗る。


「私はクラン。前は探検家をしていたが、今は彼女の世話をしている」


 シュピールと名乗った男は少し顔を引きつらせて、なにそれきも、と小声で呟いた。聞こえているぞ。


「とにかく雨が上がるまではここに居させてよ。迷惑はかけないからさ」


 お前がここにいるだけで迷惑だ。そう告げてやりたかったが、別にここは私の家ではないし、なにより彼女がこの男の袖をぎゅっと掴んでいる時点で、私に口を出す権利はない。


「好きにすればいい。彼女に聞け」


「だってさー。いい? いいよね」


 男は自己完結して彼女に向き直った。


「んでまだ君の名前聞いてないんだけど」


 やたらこいつになついているようだが、それでも声は出せないらしい。やはり話せないのだろうか。


「んー、まぁいいや。ちょっとの間だけどよろしくね?」


 男は彼女に手を差し出した。彼女は戸惑う素振りを見せながらも両手でその手を握った。




 本来なら私はさっさと家に帰るのだが、こんな傷だらけの姿で国に戻ってはすぐに怪しまれてしまうだろう。服がぼろぼろなのはどうしようもないが、せめて傷が治るまではここに隠れさせてもらおうと彼女にその旨を伝えたが、案の定、見向きもされなかった。男はそれを見てげらげら笑っていた。


「暗い~洞窟の~」


 突然男が大きな声を出した。私が訝し気に見ると、よく洞窟は響くから、と男は言い、詩を詠い始めた。とにかく無茶苦茶で、素人の私にもわかる下手くそな詩だ。それなのに、サフィーアは詩が始まるとじりじりと男に近づき、特等席でその詩を聴こうとしている。彼女はその詩に何かを見出したようだった。私には理解できないが。


「いやぁ、こんなにちゃんと聴いてくれた人は初めてだなぁ。人? まぁなんでもいいけど」


 気を良くした男が続けて別の詩を詠う。私は聞いていられなくてその場を離れ、入り口の方に向かった。どっと疲れが出て、忘れていた傷がじくじくと痛みだした。コートを脱ぎ、地面に敷く。きっと、明日には雨も上がるだろう。傷だって今よりは良くなるかもしれない。そんな期待を抱きながら、私は目をつぶった。




 私は入り口から差し込む朝日で目を覚ました。頭はまだぼーっとしていたが、雨が上がったことに気づき、私は喜んで洞窟の奥へ向かった。まだ男がいるならば伝えてやらなくては。雨は上がったから出ていけ、と。

 奥に進むにつれ、ばしゃばしゃと、誰かが溺れているかのような妙な音がしてきた。彼女が泳いでいるにしては音が騒がしい。

 地底湖に付くと、案の定、男が泳いでいた。腕も足もばらばらに動かし、まるで美しくない。私は頭を抱えたが、その側を彼女が泳いでいることに気づき、更に頭を抱えた。


「あ、起きたんだ。あんたも一緒に泳ぐ?」


「雨止んだぞ」


 男の話すことを無視し、要件のみを伝える。


「マジで? じゃー、準備してまた旅に戻りますかね」


 男が湖から上がろうとすると、サフィーアがぐいぐい、と腕を引っ張った。なんだか悲しそうな顔をしているように見える。


「お嬢ちゃん、悪いけど、オレ行かなきゃなんないの。また近く来た時ここ寄るからさ」


 男が申し訳なさそうにその手を解こうとするが、彼女は引き下がりそうになかった。男は困ったように笑い、湖に戻った。


「じゃあもうちょっとだけ居ようかな」


 私は抗議したいのは山々だったが、彼女の満面の笑みを見て、口をつぐんだ。私がどれだけ食糧を運んで来ようと、身なりを整えさせようと、にこりともしなかった彼女が、こんなにも表情豊かになっている。その事実は私に心を蝕んだが、同時に、私だけでは見ることのできなかった彼女を見ることができて、何より楽しそうにしている彼女を見て、私は満足感を得てしまっていた。




 多少、痛みが治まったので、洞窟の途中で落とした宝石を集め、彼女の元へ持っていくことにした。しばらくは食糧を持ってくることができないが、残っている絵画等と合わせれば、十分にもつだろう。何度もしゃがみ、小さな宝石を拾い上げるのは骨が折れたが、彼女のためだと思えば苦にはならなかった。

 恐らく全てを拾い切り、彼女の元へ持っていくと、再び、彼女は男の詩を聴いていた。男がこちらに気づき、ウインクをする。それを無視して、彼女の前に宝石を置いた。しかし、彼女は一切その宝石に興味を示さず、ただ詩人の詩に聴き入っていた。今は空腹ではないのだろう。そう思っていた。

 しかし、数日経とうとも、彼女はそれに手を付けることはなかった。いつもなら、とっくに食事を取っている頃合だが、彼女は弱っている様子もない。彼女が今していることと言えば、男の詩を聴くことと、男と遊ぶことくらいだ。男は、彼女に縋られるままにだらだらとここに居続けており、私はもうそれについて何も考えないことにした。


 私の怪我がほぼ完治した頃、男が珍しく私に声をかけてきた。


「オレ、長居しすぎちゃったからさ、今日ここを出ていくよ」


 彼女をちらりと見ると、朝早いためか、まだすうすうと寝息をしていた。


「言っていかないのか?」


「小さい子が悲しむところはあんまり見たくないからね」


 男は目を細めて彼女を一瞥し、ナップサックを背負いなおした。


「長らく悪かったね」


 私は返事をせず、男が洞窟から離れていくのを黙って見ていた。

 その時、背後から石を打ち鳴らすような音がした。振り向くと、サフィーアが口をぱくぱくと開けて洞窟の奥から走ってきていた。彼女は私の脇を通り抜け、男の後を追っていく。

 日の光に照らされる彼女は、私の人生の中で一番美しいものだった。

 最後まで、彼女の目に私が映ることはなかった。それでも、私はこの光景を見ることができて、幸せだった。遠くで、彼女が男に追いつく。男は驚きながらも、彼女の手を握り、ともに歩き始めた。

 私は二人が見えなくなるまで、ただ立ち尽くしていた。


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