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第8話『氷弾審判-2』

「体力は残り三割か。この中でリジェネを使える人は誰かいる?」


 その問いかけに対し手を挙げる。


「私が使えるけど今はクールタイム中。次使えるまであと十八秒よ」


「わかった。じゃあ、範囲回復魔法をかけて。その間にリジェネポーションを配るから。ところで彼は……」


 オルトは雪原に静止する青白い球体に目を向ける。


「そいつは俺の相棒だよ。蘇生がまだ使えないからそのままだ……」


 男は虚ろな目で球体を見ながら受け取った薬を飲み干す。


「わかった。アイテムを使って蘇生させる。回復出来たらみんなついてきて!」


 オルトは赤い羽根を球体の上に落とす。するとリザレクションと同じように球体が光を放ち、男の姿に戻っていく。




「はあ……無事、全員戻ってこられたね……」


 二分半ほどしてオルトさんが、襲ってきた二人の男たちと見たことのない二人の少女たちを連れて戻ってくる。


「オルトさん! それにさっきの人たち……と、えーっと、あなたたちは……?」


 男たちの仲間なのだろうか。見覚えのない顔ぶれの少女たちに質問する。


「あれ、もしかして気づいてなかった? ずっとさっきの戦いを見てたんだけど」


「いや、その……必死だったので……」


 そんな会話を遮るようにしてオルトさんが手を二度叩く。


「せっかくだし座って話そうか」


 右隣にオルトさんが、左隣に神官服を着た少女が、自分を含め計六人が円を描くようにして座る。


「さて、まず聞きたいことがあるんだけど君たちが噂の『小城狩り』かな?」


「小城狩り……?」


 聞きなれない言葉に首をかしげる。その反応を見てオルトが頷き、説明する。


「ああ、小城狩りは今日みたいに小城が出現してそれを探しに来た人を狙ってPKする行為だ。なかには初心者の人たちも含まれているからマナーの悪い行為だと俺は思っているよ」


 プレイヤーキル、その頭文字を取って略してPK。その正式名称の通りプレイヤーを殺すことだと記憶している。ボクが覚えている数少ないオンラインゲーム用語の一つだ。

 その説明を聞いて質問された男たちは慌てて首を振る。


「いやいや、俺たちはそんなことしてねえ。初心者狩りも飽きたから今日はそこそこレベルの高いソロプレイヤーを狙ってただけなんだって!」


「……うん、どちらにせよ、いや初心者狩りの方がマナー悪いな……」


「うわ、最低……」


 神官の少女も救いようのないゴミを見るような目で男たちを見る。


「そ、それは悪かった! あの戦いで俺たちは心を入れ替えたんだ!」


「ああ、この通りだ! どうか許してほしい」


 痛い視線の中、二人は額を地面に擦り付け謝罪する。


「そ、その……顔を上げてください。別にボクは気にしてないですよ」


「今までに君たちが襲ったのは彼だけじゃないはずだ。全員に謝罪するなんてことはできない。だから、これからの態度で示していけばいい」


 オルトさんは少女たちの方に顔を向ける。


「あと、君たちもわかっていたなら止めてあげた方がよかったね。上級者対上級者の白熱した試合でもなく今回は何もわかっていない初心者を狙った一方的な試合だったんだ。傍観も同罪、そんな初心者狩りで自分が好きなこのゲームを辞めてほしくないんだ」


 それを聞いて初心者狩りの男たちを前に高圧的な態度だった神官の少女も何も言い返すことができず俯く。


「まあ、この場合は初心者とはまた訳が違うみたいだったけどね……」


「そう、そうだよ! あんた一体何者なんだ? レベル35とは思えねえステータスと動きだったぞ!」


 短剣使いの男が興奮して立ち上がる。小柄だが横に大きい分、座っている目の前に立たれると気圧される。


「え、えーっと……」


 何者と言われてもただのゲームを楽しんでいるプレイヤーとしか言いようがない。だが男の求めている答えはそうではないはずだ。何と答えればいいのかわからない。戸惑っていると横から声が聞こえる。その声の主はオルトさんだ。


「生活技能ランキング一位、そして元アイン・マイスターズの『テイマー・ノア』、だね? 今日のテイムを見て思い出したよ」


 それを聞いて四人が驚く。


「アイン・マイスターズって昔有名だったあの生産職ギルドでしょ?」


「ああ、俺も聞いたことがある。十五種類ある生活技能それぞれの一位が集まったギルドだろ」


「なるほどな……だったらそのステータスも名工たちが作った装備で強くなっているんだから納得だ」


 皆、うんうんと頷いて納得している。


「あの……どうしてギルドのことを?」


 ずっと思っていた疑問をオルトさんに投げかける。


「どうしてって、アイン・マイスターズは俺たち最前線ギルドもお世話になったし、そこのメンバーは元々最前線組だった人たちもいるからね。有名も有名だよ」


「な、なるほど……」


 他人からあのギルドがどう見られているかなど気にしたこともなかった。一日に何度か依頼されることはあったが、それでも平穏に家族のように暮らしていたつもりだった。そのはずがまさかここまで認知されるほど有名になっているとは知らなかった。

 感慨にふけていると目の前に立っている男が屈み、手を伸ばす。


「なあ、俺タップスって言うんだ。お前が良ければだが俺たちとフレンドになってくれよ。今でさえ強いんだ、この先レベルが上がってさらに強くなっていく姿を見てえんだよ」


「おいおい抜け駆けは禁止だぞ。俺もフレンドになってくれよ」


「それなら私も!」


 銃使いの少女も手を挙げ、四人が目の前に集まる。それを見てオルトさんは微笑ましそうに笑っている。

 その言葉を聞いてあの日のことを思い出す。


「次は君が居場所を作る番。そうだね……まずは友達を作ってみるとか」


 ――ギルマス、居場所を作るなんて大層なことはできないけど友達ならできそうです。


「その……ボクでよかったら」


 頷き、その手を取った。

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