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第13話『光の幻獣-2』

 俺たちは死ぬ。つまり、パーティーが全滅するとオルトは確かに言ったのだ。オルトにはいったい何分先の未来が見えているのだろうか。とてもここから全滅するとは思えない。

 起こるかもわからない暗い未来のことを考えても仕方がない。聞かなかったことにして引き続きテイムを続ける。

 そこから十七分が経ち、テイムの残り時間は十分を切った。ここまで時間が経てば最初のときと回復のペースが違うことが目に見えてわかる。三十秒間隔で回復していたのが今では十秒を切っている。


「……わかったわ! あんたのことだから中二病が抜けきらなかったんでしょ?」


「はい、違う。じゃあ、俺の勝ちだな!」


「はあ? 別に挑戦は一回だけだなんて言ってないわ。まだ私は負けてないわよ」


「素直じゃなさすぎだろ……。もう今更何言っても無駄だな。いいぜ、ただし挑戦はあと二回だからな」


 まだやっていたのか。三倍も回復のペースが違うというのに彼らは一向に気づく様子がない。だが、この火花散る会話の中に割って入る度胸は持ち合わせていない。

 そっとしておこう。


「体力を一定まで削ったら行動パターンが変化するっていうのはよくある話だがこいつはどうなっているんだ?」


 ユニコーンの攻撃を斧で受け止めるガラハド。その隣ではオルトが光の柱でユニコーンに少量のダメージを与えながらガラハドのサポートをしている。


「時間経過……もしくはテイムが関係しているという可能性もある」


「おいおい、テイムが関係するなんざ聞いたことねえぞ。何にせよあと九分か? それまで耐えればいい話か」


「ああ。体力回復の間隔が早くなっているとはいえスゥが確実に削ってくれるから今のところは十分耐えられそうだ」


「今のところは……ってどういうことだよ。何かこいつのことを知っているのか?」


「いや、最初に話した通りの情報しか知らないよ。でも、俺たちが戦っている相手は幻獣だ。幻獣がこんな簡単にテイムできるはずがないって考えてしまってね。これがただの考えすぎであってほしいが……」


 前方で攻撃を受けている二人もお取込み中のようだ。

 オルトと同じようにボクも何事もなく終わってほしいと思う。

 そんな考えを裏切るようにさらに回復のスピードが加速していく。テイムの残り時間は五分を切った。ユニコーンの回復間隔は今や三秒。


「おい、こんなのチートだろ……。体力を全回復する異常な回復量を持ったスキルがたったの三秒だと……? 俺らは裏技だからいいもののこんなの正攻法じゃ一生倒せねえじゃねえか……!」


「いや、ただ回復が早まっただけじゃない。ユニコーンのHPゲージを見てくれ」


「HPがどうした? ってマジかよ……!」


 回復した瞬間、ユニコーンの赤いHPバーの右が僅かな量だが白く染まっている。これが何を表しているのか、それは誰もが知っていることだった。


「シールドが追加されてやがる……!」


「……ああ。今はまだスゥが削り飛ばせる範囲内だけどおそらく時間経過と同時に増加していくだろう。くっ、何か作戦を考えないと……」


 必死でガラハドのサポートしながら考えるオルト。打開策が見つからないオルトに差し伸べるように後ろから救世主の声が聞こえる。


「――わかったわ!」


 それを聞いてオルトが振り向く。その声の主はセラフだった。


「セラフ、もしかして何かわかったのかい?」


「ええ。ずばり、魔法使いに憧れたからよ!」


「……ん?」


 正解を確信した顔でセラフはタップスに指を差す。どうやらこの状況下でもまだ争っていたらしい。一連の流れを全く知らないオルトは頭にいくつものクエスチョンマークを浮かべて固まっていた。


「えっと……あの二人は何を……?」


「何か別の戦いをしているみたいです……」


 そうとしかあの争いを表現できなかった。


「まあ、いい線いってるが違うな。じゃあ、チャンスはあと一回だな」


 指を一本立ててニヤリとタップスは座っている。


「いい線ってなによ……。今に見てなさい! 次で当てるわ……ってあれ、ガラハドHP減るの早くない? もう回復しないといけないじゃない……ってユニコーンの回復スピード早くなってない?」


「え、今気づく……? そう、ただ回復しているだけじゃない。シールドまで付き始めた。今はまだなんとかなっているけどこのままだと近いうちに――」


 オルトが前線からいったん離れ、セラフに状況を説明しているうちに……。


「……あれ? ガラハドを回復できない」


 画面左の一番上に自分の情報が、その下からパーティーメンバーの情報がずらりと並んでいる。一番下に表示されている人物の緑色のゲージが全て黒に染まっている。一番下に表示されているのは、ガラハドだ。


「……っ! まさか!」


 ユニコーンの赤色のHPバーにはまだ白いゲージが残っている。つまり、スゥが与えたダメージがユニコーンのシールドを貫通できなかったということだ。


「HP満タンのユニコーン……!」


 体が淡い光に包まれたユニコーンの姿を見てボクは呟く。

 ユニコーンの情報が表示されているその下に書かれている黒色のバーは八割五分が紫に染まっている。テイム残り時間、四分半。ユニコーンがこちらに突進してくる。

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