♯1 一限休みの雪
私は4階からの眺めが好きだ。
4階の一番東にある音楽室から聞こえてくる彼女のピアノの音と、学校の裏庭の大樹。
青い空と、不思議な形をした雲。
1年のときから、毎休み時間ここに来るのが好きだった。
ここからの眺めに惚れたのは入学してすぐだったが、最近は、音楽室から聞こえてくるピアノを聞くのを目的にここに来ている気がする。
ピアノを弾いているのは、まだ20代前半の音楽教師、白石梨沙先生だ。
綺麗な顔立ちをしていて、彼女を好いている男子生徒は多い。
もちろん女子生徒からの人気も高い。若い先生だから、中学生のノリにもついていけるのだろう。
私は、そんな彼女のことが、好きだ、たぶん。
今日は雪が降っていた。
ここに雪が降るのは今年度、二度目である。
もしかしたら三度目かもしれない。霙は雪に含むのか…?
含むなら三度目だ。
今年の初雪は、彼女と二人で見た。
彼女が窓のそとをじっと眺めていた。
「先生、なにしてるんですか?」
『あ、真尋ちゃん、なんか白いの降ってるんだよ。雪っぽいけど…』
窓の外を覗くと、まだ降り始めの、小さくて白い雪だった。
私が窓を開けると、先生は、入ってくるじゃん!と笑いながら少し怒ったけど、楽しそうだった。
二人で窓越しの雪を眺めていたら、先生が、
『やっぱちょっと開けない?』
と悪戯っ子のような顔で囁いたので、私が鍵を開けると笑顔で窓を開け、入ってくる雪を腕に乗せて『すごい!雪だ!』と子供のようにはしゃいだ。
ときが止まればいいのに。
そう思った。
私はきっと先生の笑顔をずっと見ていたいんだろう。




