異世界は真っ暗でした
「今度は真っ暗かよ…」
さっきは真っ白い空間だったくせに、今度は真っ暗な空間ときた。全く何も見えない。立ち上がって何も見えない中、手探りしながら歩いたがすぐに何かに躓いた。
”ガシャン!“と大きな音共に衝撃、どうやら自分はこけたらしい。
「なーにをやっておるのじゃ。チンケな石でつまづきおって」
蛇の声が聞こえる。この真っ暗闇の中、声が聞こえるだけで安心感が生まれた。
「あれっ…お前もここにいるのか?ここが異世界?なーんも見えないじゃん。ってかお前は世界を移動できないんじゃ?」
「一度に沢山聞くで無いわ!妾もこっちに来れたようじゃの。まさか成功するとは思わなんだ。これは嬉しい誤算…っていつまで寝転んでおるんじゃ?」
「俺なんかしたっけ…うん…スライムもちゃんといるっぽいな…繋がりは感じる。ってかお前この暗闇の中それだけ見えてるってすごいな。どの辺にいるんだ?」
身体を起こしながら言う。またコケてはたまらんので取り敢えず座って。
「む?そうか、ヌシは異世界から来たんじゃったな。それもヒトの身体ではなくなったのじゃから無理もないか。周りにある。空間を意識してみよ。光を見ようとするから光なき所が見えんのじゃ。まずは…自分から光源のようなものが出ているイメージでやってみい。」
「何だそれ…?自分がライトみたいに光ってるイメージって事か?うーん…おっ」
ゆっくりと周りが照らされたように見え出した。ゴツゴツした岩でできた空間が広がっている。そして目の前には洞窟っぽい洞穴。横を見ると黄色いスライム。
「見えたようじゃの。動く鎧系の魔物は目などの感覚器官はない。なので周囲の魔素を感じるのじゃが…ヌシは人間の感覚に引っ張られるであろう。慣れるまではそういうイメージで見ているが良い。」
「なんかよく分からんが真っ暗でも見えるってのはすごいな。魔素とか何とかその辺の話は後にしよう。んで?蛇、お前は何処にいるんだ?」
声はすれども姿は見えず。黒い蛇をキョロキョロと探す。
「目の前におる。このスライムじゃ。このスライムも妾も半端な魂だった故、『生命の実』を取り込み変質する所に飛び込み、見事混じり合うことができた。こんな方法でまた肉体を得られるとはな」
ソファのようなスライムから一部が伸び、にょろんっと蛇の顔の形となった。
「しかし、ヌシと一心同体なのは変わらぬようじゃ。感覚からして、ヌシの胸にあったあの石。アレが砕けると妾も共にお陀仏じゃの。どの位自由に行動できるかは分からんが…まだそんなに遠くは離れられぬじゃろうな。」
蛇がチロチロと舌を出しながら喋る。スライムから一箇所だけ蛇が出ているのは何か気持ちが悪い。
「スライムになったってそりゃまた面白いなあ。…もう操ったりはできないっぽいな。」
「そちらの意思は伝わってきておるぞよ。意思の疎通は念じるだけでできそうじゃ。行動の主権は妾にあるようじゃがな。ほれ」
スライムから五本の突起が出る。小さな手足と尻尾が生えて◯ッシーの様だ。
「おおーっ、ほんとに伝わってるな。スライムスゲー」
「うむ…まだあまり複雑な変化はできぬ様じゃが…まあ、これからの進化次第じゃろ」
頑張って蛇の首をいくつも生やそうとしてただ突起が出ているだけのスライム。何になろうとしてるんだ?
「進化とかあるんだ。魔素とか色々ゲームみたいだ。で、これからどうするんだ?」
「妙なところで順応がいいのお。まあ、ヌシにもこの世界については色々と話しておいた方がいいかも知れん。後はお互いの身体の能力確認じゃな。『知恵の実』の出番が来たようじゃぞ?」
「もうこの世界楽しもって切り替えたからな。で、まず『知恵の実』とか『生命の実』とかなんなんだ?なんかよく分からず食ったけど」
「それは『知恵の実』に聞くのが1番じゃ。ヌシに…その前に、ずっとヌシと呼ぶのも味気ない。ヌシ、名は何というんじゃ?」
「俺?俺は…いや、せっかくだし、名前新しく決めちゃおっかな。生まれ変わったわけだし。お前こそ名前は?」
「妾も名前は捨てておる。ヌシが何か決めておくれ。可愛い名前が良いぞ。」
「お前は女なんだよな?うーん…こういうのって結構悩むよなあ…」
「妾は雌雄が決まっているわけではないが。可憐な妾に似合う高貴な名を頼むぞ」
うーん…元は蛇だもんな。蛇が可愛いって何だ?俺は鎧だし…鎧…そうだ!
「決めた!お前の名前はジャム!俺はガイアに決定!」
「ジャム…ふむ…悪くない。気に入ったぞ!なかなかやるでは無いか!」
蛇と鎧、1文字ずつ足してジャムとガイアだ。すぐ思いついた割には良いだろう。
「ヌシの名前はガイアか…まあ、今の見た目では名前負けじゃがそのうち似合うじゃろうて。これからよろしくのお。ガイア」
「うわっ、こっちはディスられた。この鎧、もっとゴツくできないかなあ…まあ良いや。よろしく、ジャム」
「うむ、お互い長い付き合いになりそうじゃからのう…とりあえず自己紹介も済んだことじゃし。『知恵の実』の使い方から教えていくかのお」
こうして、2人の物語が始まったのであった。
やっとこさ第1章始まり、次回は説明会です。
とりあえずこの世界のお話かな。