ニンゲン発見!
1つの横穴から見える灯、ふわふわと動きながら近づいて来る。
咄嗟に近くの岩陰に隠れるガイア。ジャムには水中に隠れてもらう…
「うまく…………売っぱらって………金が………」
「……前に………楽しんで………」
「ガッハッツハッツハ!!!」
話し声が聞こえる。男が4人組のようだ。声は大きいようだが距離が離れていてよく聞き取れない。
『おいジャム!人間!異世界人!どうしよう!緊張しちゃう!もっと身体綺麗にしとけばよかった!』
『女子か!テンションおかしくなっておるぞ!落ち着け、どんな奴かも分からんし。取り敢えず様子を見てじゃな…何よりヌシ…見た目魔物じゃろ』
『大丈夫だって、只の鎧にしか見えないって。お前は…ペットって事で!良いじゃん!はーなーしーたーいー!』
念で意思の疎通をするジャムとガイア。3人は結構荷物を持っており、荷を下ろし始めた。どうやらひと休憩しそうだ。
『はあ…全く、どうなっても知らんからな。コヤツ…トラブルメーカーの匂いがしてきたぞ…』
『よっしゃ…早速…』「おや!どもども!奇遇ですなあ!こんな所で人に会えるとは!ご機嫌はいかがですかな?」
会話のきっかけ下手かよ!とツッコむのを必死に抑えるジャム…ちなみに、普通に会話できるのはジャムの記憶と知恵の実がリンクしてたりする。
一瞬ビクッとし瞬時に武器を取る男達、1人が杖を振り、多数の光源を飛ばす。男達もこっちを確認したようだ。
「何だてめえ!って、ただの冒険者か、装備からして…初心者だなあおい…どーやってここまで来やがったんだ?」
ボスっぽいのが話しかけて来る。変に勘ぐられないようにしないと…
「それはですねぇ…ほら…その…この洞窟真っ暗じゃん?…魔物に襲われるじゃん?…道わかんないじゃん?…ウロウロしてたら…やっと人を見つけたと…」
嘘はついてない…4人組はため息をつきながら武器を降ろした。
「なんだ…ただの迷子か…ってかお前1人か?明かりも持ってねえし、荷物も手ブラ、初心者ってレベルじゃねーぞ?」
なんか怪しい目つきで見られるガイア。これは警戒されて居るようだと緊張する。
「いやーそんな事ないっすよ!武器はあるし、食べ物は魔物食えますし!ここの魚とか!後…1人じゃなくて相棒がいるんで!おーい!」
ズルリと水中から現れるジュラ。そんなに驚いた様子は無いようだ。
「お?お前、魔物使いか?スライムって、そんな使えん魔物しかテイムできないって…連れて来る意味あんのか?」
「いやいや旦那ァ、このスライム、すっごい役に立ってくれるんすよぉ?水を出してくれますし、光ることもできるんです!洞窟探検には必須ですぜ!」
調子に乗った感じで話すガイア。ジャムも空気を読んで弱く電気を出して光り、ピューっと水を出してみた。
「お、変異種か?コイツは使えるなぁ…よく見たら武器もちょっと良いもん持ってるじゃねえか…コイツはラッキーだぜ…」
最後の方はボソボソと独り言の様に呟くボスっぽいの。後ろでは後の3人組がヒソヒソと話している。
「おーおー!まあここで会うのも何かの縁。仲良くしよーや、ガッハッツハッツハア!」
急に機嫌が良くなり親しげにしてくる。どうやら認められたようだ。
「おお、自己紹介しとくぜ!俺はボッス!コイツらはヒヨロとデーブとチンビンだ!ここでちょっと休憩しようと思ってた所だ。お前さんも少し休んでけよ!」
背の高いヒヨロと太っちょのデーブ、背の小さいチンビン。光源を飛ばしてたのはヒヨロの様だ。
「そりゃあもう、お言葉に甘えて!こっちはガイアでスライムはジャム、宜しく!」
喜んで近づいて行くガイア。向こうも嬉しそうに輪に入れてくれる。なんかめっちゃフレンドリィだ!
『念のために言っておくが、普通はスライムは喋らぬ。妾は念で喋るからの。それにしてもコヤツら、なーんかあやしいのぉ…きっしょくの悪い笑みじゃ』
念で語りかけて来るジャム。人に会えて嬉しいガイアはそんなこと気にならない様だ。
「いやーっそれにしても大荷物っすねえ。キャンプでもするんすか?」
何気なーく聞くガイア。すると、なんだかソワソワした感じで。
「えっと…その…そうそう、キャンプなり、食べ物いっぱいなりよ!」
ワタワタと喋るチンビン。こんな所にキャンプとは。冗談のつもりで言ったのだが、結構人里から近かったりするのだろうか。まずは仲良くなってから情報収集だと、会話を続ける。
「良いっすねえ!そんなとこお邪魔して良いんすかぁ?うわっ!その荷物動いてるっ!なにそれっ!」
何だか細長い、人1人が入れそうな袋がモゴモゴと動いた。何か“んーっ”って聞こえる。
「そ…それは…魔物!そう!マモノでゲス!レアな魔物を捕まえたんで持って帰るんでゲスよ!」
ドモリながら喋るヒヨロ。そそくさと奥に荷物を隠してしまう。
「えーっ!レア魔物!見てみたいなあ!チラッとだけでも!ダメ?」
隠されると気になってしまう。覗こうと立ち上がりかけると…
「だ、だめだぶー。この魔物は…そう、噛み付くし…臭いし…気持ち悪いんだぶー。みてもいいことないぶー」
間に回り込むデーブ。なんかめっちゃ見せたくなさそうだ。
「えー、そんなの気にしないからチラッとだけ!ってかそんなの誰が欲しがるの…」
ちょっと見る気が失せるガイア、冷や汗をかきながらデーブが答える。
「そりゃあ…お金持ちの貴族と…でぶっ!」
頭を殴られるデーブ、ボッスのゲンコツを喰らいうずくまる。
「余計な事を言うんじゃねえ!このバカ!悪いなガイア、金のタネだからコイツは話せねえんだ。おいっ!片付けとけっ!」
ヒヨロとデーブが奥に運ぶ。足元にジャム。躓くヒョロ。荷物が開く。中からは口に布を巻かれたヒト。
固まる空気。あれ?人さらい?
「おい!やれっ!チンビン!」「隙ありなりっ!」
“グサッ”………「ん?」
ガイアの目に映ったのは、鎧の隙間から剣を刺されている所だった。
休みだからと言って、仕事が無いとは限らないっ!
期待させてしまった方が居たらすいません。
いきなりロクでも無い人間に絡まれるガイア
次回、やっとおなごが出ますよっ!