雷打たれて異世界へ
「こうなる気がしてたよ…」
外は大雨、暴風、時々落雷…確実に電車は止まっているし、社内には俺1人、他には人っ子1人いやしない。
シーンと静まり切ったオフィスで盛大なため息をつく。
時間は夜の12時前、前々から台風が近づいていることは分かっていた。
他の社員はそそくさと退社し、1番下っ端の俺に仕事を押し付けて帰りやがった。
まだまだ仕事のできない俺には断る事も出来ずこうなったって訳だ。
「台風が落ち着くのは朝、どうしよっかな…」
電車が止まっては帰ることもできず、仕事が終わってすることも無く。ボーッとパソコンモニターを眺めていた。
「喉…乾いたな…」
この会社には屋上に喫煙所と自販機がある。ずっとオフィスにいるのも気が滅入る。
コーヒーでも買って、一服しながらどうするか考えようと重い腰をあげる。
会社に泊まるか、この時間ならホテルは無いだろうし…ネカフェか…?どれも気が滅入る。
屋上に向かいながらスマホゲーを起動する。ずっとやってるゲームで唯一の趣味みたいなもんだ。
「お、ログインボーナスでガチャ引けるじゃん」
ゲームで1番楽しいと思うのはやっぱりガチャを引く時だ。レア度が高いキャラやモンスターを引く、クセになってしまって辞められない。
屋上につき、喫煙者用のベンチへ向かう。粗末な作りだが屋根があるので。濡れないように気をつけながらコーヒーを買い、ベンチへ腰掛けた。
「レアキャラ来い!来い!」
ゲーム特有の演出が出る、終わるまでどんなキャラが出るかわからない。何回引いても何とも言えないドキドキ感を味わえる。
「っと、うーん…持ってないから嬉しいけど…ビミョーだな…」
スマホの画面にはプニプニしたスライム。その上に座りながらバランスを崩しかけている鎧騎士。
レア度は普通、強さも普通、上級者はまあ使わないが、一部には愛好者がいるらしい。
「スライムって乗って強くなるのか?お互い動きづらいだけな気が…まあいっか」
そんなとこ突っ込んでも仕方がない、まあ、見た目は嫌いじゃないし。持ってなかったから良しとしよう、とコーヒーを啜る。
雨が凄い、遠くで雷が光っているのが見えた。
なんかやるせない気分、雨に当たらない屋根のギリギリまで歩いていく。
「雷でこの会社、ぶっ潰れないかなあ…」
別に何かあったとかじゃない、ただ漠然と思っただけだ。
学校に行きたく無くて「学校に隕石落ちてこないかなあ…」って考えちゃうみたいな。
ただ、ふとやるせなさを感じてしまったのだ。こんな生活が続くことに…。
「って、落ちてきたら死んじまうか」
別に死にたい訳じゃない、ただなーんかつまんなかっただけだ。何か楽しいこと起きないかなーって。そして、そんなことを考えたからなのか、偶然なのか、運命なのか。
兎に角、よく分からないがこれだけは覚えている。
目の前が真っ白になり、全身に物凄い衝撃を感じながら意識を失った。
後から考えてみたら…雷…落ちたんじゃ無いかなあって…
読んでくださってありがとうございます!
初作品なので拙いかとは思いますが、少しずつ書いていきますので
よろしくお願いします!