一章「強くてニューゲーム」
ソシテ、ボクは目を覚ました。そして僕は、目を醒ました。
…そう、さっきのは、きっと…。キット、夢だったのだろう。
僕は、そう思い、のっそりと起き上がった。
…でも、僕がさっき出した結論は間違っていた。瞬時にそう、気づいたのだ。
そこには、確かにあったのだ…!その少女が髪に付けていた、あの蒼い薔薇の髪飾りが、確かにあったのだ…!
「ソンナ、馬鹿な…!」
僕は、自分の目が信じられなかった。まさか、夢のなかで見たものが、現実にあるはずがない…!では、さっきの夢は、夢ではなかったのだろうか…。途端に僕の頭は混乱してしまった。
そうして混乱している僕の耳に、突然と拡声機でも使ったかのような大声が入ってきた。
「いつまで寝ているのよ!学校に遅刻するわよ!」
その言葉を聞いた途端、僕の頭の中で考えていた、あらゆることが消し飛んだ。そうだ。今日は、学校だったのだ。
さっきまでの夢なんてとうに忘れて、急いで制服に着替えて、外へ飛び出した…。
「キィィィィン、コォォォォン クァァァン、クォォォォン…。」
朝の教室の騒めきをかき消すかのように、最初の鐘が鳴った…。始まりを告げる鐘が鳴った。
…そして、その少し後に、ゆっくりと戸を開け、僕は教室に入った。
「お前、また遅刻かよ。」
「どうして、君はいつも遅刻してくるのさ…。」
そんな声が、教室のあちらこちらから聞こえてくる。
…でも、今日は珍しく、先生がみんなを黙らせて、忽然と話し始めた。
「今日から、この学校に海外から留学生がくることになりました。そして皆さんは、今日から半年間、その留学生とこの教室で、共に過ごしていくことになります。」
…そんな知らせを受け、みんなが急にまた、騒めきだした。
…それもそのはずだ。僕たちの学校、仙波高校は、大して頭もよくなければ、これといった功績があるわけではない。なのに、なぜ留学生なんかが来るのだろうか。僕にはただただ、それが疑問だった。
「先生!その留学生は、何処の国からくるのですか。」
僕も、少し気になっていた質問だ。
「えっと…。だな…。
“ソムニシム”…?という国のようだ。」
先生は、少し困惑しながらも、そう答えてくださった。しかし、そんな国名は、僕は疎か、クラス全員…。それだけでなく、先生も聞いたことがないということらしかった。
そうして僕たちが困惑している中で、忽然と、どこか聞き覚えのあるような、透き通った声が聞こえてきた。
「“ソムニウム”ですよ。
…でも、特に国名に意味はないわ。私の祖先が、勝手に決めちゃっただけですから。」
僕は、フトその声がした方を見た。そこには、確かに今朝見た夢の中に出てきた少女がいたのだ。
…でも、その少女は、夢と少し違った姿だった。
…そう。あの“蒼い薔薇の髪飾り”をつけていなかったのだ。
「ちょうど今、来てくれたが…。
こちらが、今日から半年間、皆さんと一緒にこの教室で過ごすことになった…。
えっと、君、名前は…?」
「エリー・ベリンマーハ です。“エリー”とでも呼んでください。」
僕は、その少女の名前を始めて聞いたはずなのに、なぜか、どこかでその少女の名前を聞いたことがあるような気がしてならなかった。この後の授業なんて、僕は、ずっと彼女のことが気になって、ほとんど集中なんてできなかった…。
それから、どのくらい経っただろうか…。いつの間にか、もう授業は終わっていて、昼休みに入っていた。今の僕は、彼女…、エリーのことが気になって、仕方なかった。
…僕は、しばらくそれから、ぼーっとしていた。そして気がつくと、僕の近くにエリーがいるのがはっきりと分かった。だから僕は、思い切って、エリーに声を掛けてみた。
「えっと…。エリーさん、でしたっけ…?
あのさ、僕、君を夢の中で見たことがある気がするんだ…。」
「急に、どうしたのですか…?」
「い、いや、別に、何でもないです…。」
「…そうですか。」
「それじゃぁ、僕は、これで…。」
「…ちょっと、待ってください。」
「えっと、どうかしたんですか…?」
「い、いえ、あの…。今日の放課後、可能であれば、校舎裏でお話ししたいことがあるのですが…。」
「は、はい!大丈夫です…!」
「ありがとうございます。では、また、放課後お会いしましょう。」
…僕は、期待したような回答を得られなかった。というよりも、僕自身が緊張して、まったく訊けなかった。でも、全く期待していなかった。…否、予想すらもしていなかった回答を、得ることができた。僕は、舞い上がるようにうれしくなってしまった。
…そうして、あっという間に昼休みが終わってしまい、午後の授業が始まった。
「今日は、授業が予定していたよりも少し早く進んでいるので、いつもの授業の代わりに一つ、皆さんに考えてほしいことがあります。テーマは、“時間”についてです。
突然ですが皆さんは、時間をどのように考えていますか。」
急に、よくわからない質問が来た。
僕らの担任、冴木 宗次 先生はいつもこうだ。急に僕らに、意味の分からない質問を投げかけてくる。
…まぁ、これと言って迷惑というわけではないのだが。
そうして、僕らが答えを考えているうちに、再び先生が話し始めた。
「私は、時間というのは、一種のビデオテープのようなものだと思う。というのも、最近私は思うのだが、“運命”というやつは、この世界ができたころからすでに決まっているのかもしれない。」
「先生、それはどういったことなのでしょうか…。」
「時間は、この世界が誕生したとき…。否、或いはもっと前から生成されていて、それはまるで、ビデオテープ…、表現を変えるとしたら、動画のように、その瞬間瞬間が重なって動いているかのように錯覚しているだけ、ということだよ。
もちろん、普通の動画なら大体29.97~60 fps(一秒間に何枚画像を表示させるか、ということ)程度だが、時間はその比じゃないくらいのコマ数だと思うが…。」
…そうして、先生が話しているうちに、気が付いたら、最後の鐘が鳴っていた。
「では、今日の授業はここまで。」
そうして、午後の最後の授業が終わった。
先生は、いつもの通りの妄想科学を披露してくださった。僕は、先生の話をいつもただの作り話だと思って聞いている。ただ、どうやらエリーは違うようだった…。
エリーの顔を見ると、彼女は何か、深く考え込んでいる様子だった。正直僕は、意外に思った。あの冴木先生の話を、こんなに興味深く聴いている人を見るのは、初めてだったからだ。
もしかすると、さっきの冴木先生の話は、今朝の夢のような場所での彼女の発言と、何か関係があるのかもしれない…。
そんなことを考えているうちに、帰りのHRは終わっていた。
僕はフト、昼間エリーとした約束を思い出した。そして僕は、急いで校舎裏に向かった。
どうも皆さん、一話ぶりです。キーボードの「、」と「。」と「・」と数字キーを打つ時に極端に入力速度が落ちるKAMEです。←挨拶が長い!
今回は、前回の比にならないくらい長くなりましたね…(笑)
…まぁ、前回が短すぎただけかもしれませんが^^;
…さて、本編の話をしましょう。
今回、お気づきの方もいるかもしれませんが、とある登場人物の名前が、某同人音楽CDのキャラクターのアナグラムになっていたりします。そういった要素もちょっとだけ入れてみました。(何気にこういった要素を入れるのは初めてです)
今回は、何かと挑戦の多い物語になりそうです…。
では、またそのうち、次話でお会いしましょう!