第7条 護身術はできません!
次に目を覚ました時には、ホコリが積もった床に座り込んでいた。
部屋全体は暗くてよく見えないが、壁の隙間から細く入り込む光のおかげで、自分の周囲の状況は確認することができた。
周りには崩れた本や資料の紙束が散乱していて足の踏み場もない。
「資料室?」
ずいぶん散らかってはいるが、あたりを見渡す限り、神社の資料室のように見える。
あの騒動は夢だったのだろうか。
自分の置かれている状況がわからず、ぼんやりと暗闇を見つめていると、少し離れた場所にある壁が重い木のこすれる音と共に、左右に開かれた。
壁だと思っていたのは大きな木製の扉で、外には見知らぬ数人の男性の姿があった。
彼らがあの扉を開けたのだろう。
扉が開いたおかげで外の光が差し込み、部屋の全貌を見渡すことができるようになった。
私が座っていた部屋は、もと居た資料室よりはるかに広く、ほこりっぽいが神殿のような雰囲気がある。
資料室だと勘違いしたのは、私の周辺にだけ資料室にあった棚や本が散乱していたからだ。
「おい、誰かいるぞ」
「女か?」
「ほんとにいた」
外にいた人々が棚の間に座り込む私の姿を見つけて口々に騒ぎだし、部屋の中にずかずかと入ってきた。
男たちはみな着物姿だが、どれも何日も着続けているらしく薄汚い。
顔つきも厳めしく、みんな目つきが剣呑だ。
これはもしかしてヤバイのではないだろうか。
不審な男たちに囲まれ、私は身の危険を感じ立ち上がる。
すると、立ち上がる私と反対に男たちは床に這いつくばって、頭を床に擦り付けて言った。
「ナカトミ様」