第5条 お願い事は正確に!
そういえば、宮司はこの神社のご祭神の子孫だったな。
ということはあのぼんくら息子もか。
口ぶりからして、この男の子はうちの神社のご祭神なのだろう。
だいぶイメージと違うけど。
「僕は君にお詫びがしたい、君の願いを叶えてあげる」
男の子は心底申し訳なさそうな顔で、私を見上げながらそう言った。
「神様が私の願いを叶えてくれるの?」
神様とおぼしき男の子は、コクンと力強くうなずく。
これは、もしかしたらものすごいラッキーなのでは?
神様ならどんな願いも叶えられるだろう。あのぼんくらや宮司に天誅を加えてやろうか。
いやいや、あんな奴らどうでも良い。それより、一生遊んで暮らせるような大金を貰って、こんな神社やめてやる。
いろいろと妄想を膨らませていると、周囲が青く、淡い光に包まれた。
神様を中心に不思議な力が広がっていくのを感じる。
きっと願いをかなえる準備だろう。
「じゃあ願いを叶えるよ」
「え? もう? 待ってお願い事を考えるから!」
「お願い事はもう聞いているから大丈夫! じゃあ叶えるよ」
神様だからなんでもお見通しということだろうか。
神様の着物の袖がふわふわと漂うように浮かび上がり、周囲の光がより強くなった。
もう目を開けていられない。
「じゃあ、新しい世界でも元気でね」
神様のよくわからない言葉を聞いた途端、体が宙に浮いたような気がした。