第24条 片道切符の出張はゴメンです!
神になんの力もない、それは信仰において致命的ではないだろうか。
「なんでなにもできない神様を祀ってるのよ」
イヨは私の言葉に首をかしげる。
「なにもできなくても、いていただかないと」
「祀る神がいない集団は、他の集落や国に信用されませんからな」
ナシメも不思議そうに付け加えた。
「信用ってどういうこと?」
「この世界ではね~、なにかしらの神に帰依していないと、外交も貿易もできないのよ~、無能な神でもね~」
イヨやナシメの代わりに、フレイアが寝転がったまま答えた。
彼女はすっかりふてくされて、残ったスナック菓子をむさぼっている。
「ナカトミ様の故郷に神様はいないんですか?」
「いる……と思うよ? だけど、信仰してなくても不利益はないから」
「この世界じゃ考えられないけどね~」
イヨもナシメも信じられないという顔をしている。
どうやらこの世界では神への信仰が、人間の信用と直接関わっているらしい。
まあ、これだけはっきり神を認識できるなら、そういうこともあるんだろうか。
「ナカトミ様は、まずこの世界のことを知る必要がありますね」
「そうね、まずは勉強しなくちゃ」
「その前に神社のこと、よろしくね~、まずはあの荷物の片づけからかしら~」
フレイアが指さす先には、私と一緒にこの世界に来た本や荷物が散乱している。
そういえば、ほったらかしにしたままだった。
「あれ、なんですか? ナカトミ様」
「職場にあった資料とか荷物なんだけど、私がこっちに来るとき巻き込まれちゃったみたい」
「資料……ですか」
ナシメは興味が湧いたのか、資料の山に近寄って本を眺め始める。
「読めませんね」
「ほんとだ、読めないです」
イヨも本を覗き込んで同じことを言っている。
「読めないの? 言葉は同じなのに」
「言葉も違うはずよ~」
フレイアが衝撃的な事実を口にした。
「でも会話できてるじゃない」
「向こうの神が、こっちの言葉や文字をわかるようにしといてくれたのよ~」
結局向こうの神様頼りかい。
「じゃあ、私は知らない間にこっちの言葉を話してたってこと?」
「そうよー、しっかり意識して聞いてみなさい」
向こうで本を眺めながら話し合っているナシメたちの言葉を、意識して聞き分けようとする。
「※※※※※※※※※※?(これはなんでしょうか?)」
「※、※※※※※※※※※?(絵、いや図形じゃないか?)」
たしかに、聞いたことが無い言語を話しているのに意味だけわかる。
無意識の状態だと、自然に文字や言葉を頭の中で変換して、聞いたり話したりしてしまうらしい。
周囲が元の世界と何も変わらないせいで、今までは異世界に来た実感がなかった。
言葉が違うと知っただけなのに、急に自分が知らない所にいるのだと突きつけられたようで、迷子のような不安に襲われる。
そしてもう元の世界には帰れないのだ。
いまさら泣きそうになってしまう。
ふいに、震える手を誰かが強く握ってきた。
「大丈夫ですか? ナカトミ様」
いつの間に戻って来たのか、イヨは私の手を握りながら背中をさすってくれた。




