第16条 おっさんが空気読めないのはデフォですか?
平和な食卓に割り込んできた男。
それは昨日の男たちの親玉、ナシメだった。
彼の乱入で、友好的な雰囲気になってきた食卓がぶち壊しだ。
イヨも怯えてしまい、やっと見せてくれたかわいい笑顔が引っ込んでしまった。どうしてくれる。
しかし、非難の意を込めた私の眼差しを気にする様子はなく、ナシメは存在を確認するように私とイヨを交互に観察した。
慌ててイヨが自分の食事を背後に隠す。
ナシメはそれに気づいているだろうが、その点を特に咎める気は無いようだ。
「出かけるなら事前に言っていただきたい」
それだけ言うと、彼は荒い息を整えるように大きくため息をつき、私の向かいに座った。
「言わなきゃいけませんでした?」
「用があれば呼んで欲しいと言ったでしょう」
彼の言葉に怒気がこもる。
「神様に会いに神社まで行っただけです。それに、あんな言い方されて呼ぶわけないでしょう!」
こちらもだんだん声が大きくなる。
昨日のように、捨て台詞のような言い方をされたら頼る気も無くなるじゃないか。
「神に会われたんですか? それで、神はなんと」
「べつに、元の世界には返れない、ということが分かっただけです」
「そうですか」
それだけ言うと、彼はなにやら考え込んでしまった。
少しの沈黙のあとナシメが顔をあげる。
「ともかく、今後なにか行動を起こすときは私を通していただきたい」
最後に「いいですね」と、念を押して、ナシメはまた出て行ってしまった。
しかし、ヤツのことはどうでもいい、今はもっと大事な問題がある。
「大丈夫? イヨちゃん」
イヨは先ほどの言い争いのせいですっかり無表情に戻っている。
さっきまで赤くなったり笑ったりと、かわいい表情を見せてくれていたのに、あいつのせいで台無しだ。
「だ、大丈夫です。お茶、淹れてきますね」
そういうと、彼女は台所に引っ込んでしまった。
物静かな子だけど、あの程度の言い争いであんなに怯えるなんて、ちょっと臆病過ぎないだろうか。
イヨがお茶を持ってくるのを待ちながら、残った食事をちびちびと食べていると、外に人の気配が集まっていることに気がついた。




