第15条 はい! 私につくす女の子は大好きです!
イヨの家に帰ると、また昨日の席に座ってぼんやりしていた。
隣の台所からは野菜を切る音や湯の沸く音が聞こえてくる。
昨日からずっと世話になりっぱなしであることを考えると居心地が悪い。
しかし、自分にできることは何もなくソワソワしていると、イヨが料理を持って入ってきた。
木をくり抜いただけのお椀の中には芋などの野菜が煮込まれている。
味付けは醤油だと思うが、少し風味が違う気がする。
滋味に富むというのだろうか、贅沢ではないが疲れた体にじんわりとしみ込んでくるようだ。
しかし、昨日の夕食もこうだったのを考えると、やはりこの村はかなり貧しいらしい。
それともこの世界はどこに行ってもこんなものなんだろうか。
「お口に合いますか?」
「うんおいしいよ」
食事は貧相だが味はおいしい。
しかし。
「ねえ、やっぱり一緒に食べない?」
イヨは私の分の食事だけ用意すると、自分は後で食べるからと言って私の様子を眺めている。
「やっぱり一人だけだと食べづらいし、お腹すいてるでしょ?」
イヨはあくまで固辞しようと首を横に振ったが、それに合わせてちょうどお腹が鳴ってしまう。
顔にかかった髪の毛ごしでもわかるほど赤面すると、イヨはうつむいて丸くなってしまった。
かわいい。
じれったくなって、自分で彼女の分を用意しようと立ち上がると、イヨは慌てて私を制し台所に行ってしまった。
気を悪くしただろうか。
間もなく彼女は自分の分の食事を持って来た。
はす向かいに座るように勧めると、彼女は素直に座ってくれたので安心して私も食事を再開した。
同じように食べ始めるイヨを眺めているがずっと無表情だ。
逆に緊張させてしまっただろうか。
突然、口の中が強烈な苦みでいっぱいになる。
なにかずいぶん苦い食材を食べてしまったようだ。
あまりの苦さにむせ返りながら、水をいっきに飲み干すと、イヨが笑いを堪えていた。
「そんなに苦いですか?」
「うん、苦かった」
「この草はこの時期沢山生えてくるので、村ではよく食べるんです」
「そうなんだ、あーにが」
苦しむ私をしり目にイヨは堪えきれず完全に笑っている。
草の苦さよりイヨが笑ってくれたのが嬉しくて、私も笑ってしまった。
しかし、人が苦しんでいるのを笑って見ているあたり、この子は結構ひどいかもしれない。
彼女の本性を垣間見た気がした。
そんなやり取りをしているうちに、微妙な緊張感がやっと緩んだことを感じていると、家の戸を乱暴に開けて屈強な男が駆け込んできた。




