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ヤバそうな入部希望者について②

「え、誰……?」

 勢いよく入って来た部長は、自分の席に知らない人が座っているという事態にフリーズした。

『入部希望です!』

 そんな部長の反応に、隅田さんは最初に僕に向けてきたページを使い回した。


「え、なにそれ本当に!?嘘とかじゃなくて?」


 部長はその文字を見ると、ずいっと彼女 に身を寄せて、肩を掴んだ。


「ここは良い部よ。人数が少ないこと以外は特に非の打ち所がない最高部活。この学校の中でもベスト3に入る満足度を誇ってるわ。さぁ私に続いて言ってみましょう。この部活は良い部活。」


 彼女は手をあわあわとしながら、ノートに『この部活は良い部活』と書き込んだ。

 部長はその行動に首をかしげる。


「部長。なんかこの子自分の声が嫌で喋らないみたいですよ。てか洗脳みたいなことやめてくださいよ。隅田さんが困ってるじゃないですか。」


 見ろ。生まれたての子鹿みたいにぷるぷる震えてるじゃないか。


「ああ。それでずっと後輩君がデカい独り言喋ってるみたいになってたのね。

てっきりついに頭がおかしくなったんじゃないかと思って扉に張り付いて様子を伺っていたのだけど。」


 部長はなるほどーとぽんと手を打った。


「それでえーっと隅田ちゃん!読書部はあなたのことを歓迎します!はいこれ入部届け。」


 部長はポケットからくたくたになって折り目のついている紙を取り出した。

 普段から常備してるとは相変わらず頭のおかしい人である。


「いやちょっと待ってください。なんか仮入部とか、入部理由とか色々あるじゃないですか。いきなり入部でいいんですか?」


 隅田さんも入部させてもらえることが嬉しいのか口角が上がっていた。


「だってわたしが部長なんだもの。可愛い!はい合格―。」


 そんな部長に『ありがとうございます。』とノートに書き込む隅田さん。

 

 ああ、可愛いうんぬんは否定しないらしい。

 いや、いいと思う。

「そんなことないですぅ。」とか言われてたら隅田さんと言えども殴りたくなってただろうし。


「うちの部は来るものは拒まず、去る者は許さずで行くから。」


「ブラック企業みたいなこと言わないでくださいよ!」


 まさにアリ地獄の如し。いや、自分達の部活を地獄と表すのもどうかと思うけど、実際そんなもんだろう。


『あの、入っちゃダメですか?』


と書かれたノートを掲げた隅田さんがぷるぷる震えて僕の方を向いていた。


「そんなことないよ!」


「ならいいじゃない。あら、もう書いてあるのね。早い早い。じゃあ受理しまーす。受理しましたー。しちゃいましたー。これであなたも読書部の一員よ。」


 部長は入部届け(そもそも部じゃないから偽)を隅田さんからひったくるとポケットにぐしゃりと突っ込んだ。


 そして震える隅田さんへと手を伸ばす。

 隅田さんは恐る恐る手を差し出すと、部長はその手を両手でガシッと包み込んだ。


「これからリア充共に負けないように青春していきましょう!」


 いや。別に隅田さんはリア充に恨みはないと思うけど。

 

 そう思ったが、意外にも部長の言葉に隅田さんは力強いガッツポーズをした。

 フンヌッという力の入った鼻息で前髪が宙に浮く。


 惜しい。もう少しで目が見られそうだったのだけど。


 しかし隅田さんもリア充への並々ならぬ恨みつらみを抱えているようだ。

 

 人数が増えても変わらずこの部のリア充アンチ度は100%だ。僕は当然あいつらが大っ嫌いである。

 打倒リア充は僕が部長に唯一共にする志だ。


「リア充に鉄槌を!」


『リア充に呪いあれ!』


 何故か二人は意気投合していた。

 リア充への負の感情を吐露しながら、

「えいえいおー」と拳を天に突き出している。


 うん。僕は間違っていた。

 

 彼女のようなピュアな天使はこんなゴミ溜めに居るべきじゃあないと思っていたのだが、彼女はこの部に入る資格を十分に満たしていたようだった。


 部長と気が合ってしまうということ。  

 それはつまり、性根が腐っているということを指す。


 こうして読書部の構成員が一人増えた。


 いや、増えてしまったと言った方が正しいのかもしれないけど。

 志向的にはバリバリの反社会組織だし。


 念のためフォローしておくが、読書部の活動は読書に関するあれこれを話し合うことである。

 決してリア充を撲滅することではない、ということをここに記載しておく。


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