1-7 「決意」
今なら少し思う
もしも私じゃない誰かが王座についていたら、彼女たちはきっと別の人に仕えていて
私の事なんて、簡単に忘れてしまうのだろうと。
あの日、周りに流されて何もできなかった、言われたまま子供で無力だからって何もしなかった自分自身を一生許せないのだろうと。
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「下がりなさい、ユラ・フォーカス」
「はい。」
女騎士の名前を呼ばれたとき、私は耳を疑った。
なぜなら、その名前にとても聞き覚えがあったからだ。
「次に、今代騎士団長任命。騎士団団長。ジェイド・ヴェルチェ、前へ」
「はい」
「続いて、今代騎士団副団長任命。騎士団副団長。ツェッド・ヴェルチェ、前へ」
「はい」
知っている名前が2つ聞こえた。
私は今すぐにでも、二人に話しかけたくて
後ろに並ぶ2人が気になって、そのあとの式典の内容なんて全く記憶には残らなかった。
式典が終わった後、私を連れて
早速初仕事をする女騎士に抱えられて、自室へ戻り
私は椅子の上へと優しく下してもらった。
彼女の方を見ると、真剣な表情をしていて
私がこれから彼女に聞く話はもしかしたら、彼女自身を気づ付けてしまうのではないかと思い、声をかけあぐねていると
「陛下、そんなに眉間に皺をよせてしまっては、せっかくの綺麗なお顔が台無しですよ。」
「へ…え、えぇ…と、眉間に皺が寄っていたかしら…」
私の気持ちを察したのか、優しい表情で声をかけてくれる。
勇気を振り絞て、私は彼女に聞いてみることにした。
「ね、ねぇ…あなたってもしかして…」
私が聞こうとすると、彼女は人差し指を口にあててしーっと私を黙らせる。
「やっと、また会えたね。姫様」
いたずらな笑顔を浮かべて、うれしそうに、照れくさそうい笑う彼女の顔を見ていると、私の目からは大粒の涙があふれていた。
大切なものが、私の元へ戻ってきてくれた嬉しさと、何もできなくて申し訳ない気持ちと。
でも、その日から、今の大切にしてくれた人を絶対に大切にしようと思いました。
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「長話をしてしまいましたね。」
ライラが、一通り話終わり、懐かしそうに本当に大切そうに過去の話をしているのを見て、俺は一人の家族を思い出した。
「シンヤ殿、人はいくらでも腐ることはできます。でも、それと同じ様に、いえ、それ以上に立ち直り前に進むことができるのです。自身をあまり責めすぎないであげてくださいね。」
彼女の気遣いの言葉になんて言ったらいいのかわからなくて、手元の紅茶を口に運ぶと、意外と口に合う。
「ふふっ…お菓子も絶品ですよ?ゼフィルの作るものは、本当にどれもおいしいのです。」
「そうですね…」
自信満々に語る彼女と、なんてことはなさそうなゼフィルを見て、色々な境遇について、少し思うところがあった。
また、是非お茶をご一緒していただきたいですっと興奮気味にライラと次の約束をした俺は、自室へ戻った。
昔話を聞かされて、彼女が何を言いたかったのか、何を伝えたいと思ったのかは、たぶん最後の一言がすべてなんだろうけど、計り知れない気持ちだったに違いないだろうな…と
でも、このまま俺が腐ってしまうのはあの子と重なって見えたライラに申し訳なく思ってしまう。
部屋の中でベッドに横たわり、考えをまとめて今自分に足りないものを見つける。
「なぁ、ジェイド…そこにいるか?」
ドアの方に向かって声をかけると、ドアが開き
「もちろんです。」
とジェイドが入ってくる。いやまさかいるとは思わなかったから少し驚いたが
「ジェイドに頼みたい事があるんだけど」
「はい。」
深く一呼吸おいて、覚悟を決めて言う
「俺を鍛えてくれ」と。