第6話(1章3話)「プラーミャ・エイゼンシュテイン」
そろそろ、挽回したい……
ドレス姿の女性を担いだまま馬車から降りた火焚 守流は、そのまま地面に降りずに飛行魔法を使って、その場から離れようとした。
だがしかし、ちょうど後ろには、別の馬車が走って来ていたのもあり、直ぐに気付かれてしまう。
「緊急事態だ! 止まれー!」
後ろの馬車に乗っていた奴隷商人の1人が叫ぶと、両方の馬車が、急停止した。
そして、逃げもせずに地面に降りた守流の周りを、総勢8人の奴隷商人達が囲み混んでしまう。
『おい、ガキ! その女を返せ!』
『今だけならば見逃してやる。その女を俺達に返して、さっさと家に帰って、寝てろ!』
『それとも、ガキも奴隷になりに来たのかなー?』
今まで沈黙を守っていた守流であったが、「奴隷」と言う言葉を発した男に目線を合わせると、その男はまるで、押し潰されるかの様に、跪いた。
『おい! 如何しっ、かっ……』
そして、他の7人も、続けて同じ様に跪いてしまった。
「悪いけど、僕は、奴隷商人が大っ嫌いなんだ。金目のものを置いて逃げるのならば、追わないよ。でも、僕にとって気にくわない事をした時、君達がどんな酷い目にあうかは、その時の僕の気分次第」
そう言って、守流は空に火属性魔法を打ち上げた。
空に打ち上げた火属性魔法は、雲に直撃すると、一気に雲そのものを蒸発させてしまった。
『火属性魔法は兎も角、あんなガキが重力魔法とか有り得ねえ』
『こっ、此奴、只者じゃねえ。ずらかるぞ! 俺らの身が危ねえ』
その言葉をきっかけに、奴隷商人達は皆一斉に、木々が生い茂る森の中へ、逃げ出して行ったのである。
奴隷商人達が逃げ出したのを確認した守流は、左肩に担いだままの女性を降ろして、女性に話しかけた。
「怪我とか無いですか? あっ、えっと、僕の名前は、火焚 守流って言います」
そして、守流は続けて「良ければ、あなたの名前を教えてください!」と顔を赤らめながら言い、頭を下げた。
はあ……と溜め息をついた女性は、何かを悟った様な顔で、自己紹介をした。
『私を知らないって事は、火焚君はアースディア帝国の国民じゃないわね。私はつい最近滅びた国、アースディア帝国の13代目女帝、プラーミャ・エイゼンシュテインと申します。以後、お見知りおきを』
そう言って、プラーミャは丁寧にお辞儀をした。
「ちょっ、頭を上げて! そもそも僕は、元奴隷なんだよ」
プラーミャの行為に慌てた守流は、思わず自らの過去を口に出してしまった。
それを聞いたプラーミャは顔を上げると『ふーん、元奴隷なのかあ……まっ、いっか!』と納得した様な顔をした。
「えっと……如何言う事ですか?」と訳も分からず、守流が問いかけると、プラーミャは守流を指差してとんでもない事を口にした。
『火焚 守流君、この私、プラーミャ・エイゼンシュテインと共に、アースディア帝国を再建国しましょう!』
次回の話は、新しく登場する、とある一族のお話です。