第2話 【 異世界転移と仕事 】
社長が出て行ってから三時間ほど経ったころ、ようやくこの会社概要を読み終わった。
まとめると、こことは違う世界、つまりは異世界へ行って仕事をこなすこと。期間や内容はバラバラでその時々によって違うらしい。その他色々書かれていた。従業員は例外を除き会社の敷地内の社宅に住むこと、他人の情報を探らないことなど制限があるらしい。
そして運が悪ければ死んでしまうこともあるということ。
「エルさん、読み終わりましたけど…」
何かの書類に目を通していたエルに声をかけると案の定不機嫌そうな顔をして、こちらを見た。
「それで、なにかありましたか。」
「え、えーとですね…」
少し口ごもりながら俺はいう
「異世界って言われてもあまり実感が湧かないというか、本当の話でしょうか?」
異世界、ゲームや漫画とかの話の中だけだと思っていた。
「本当です。異世界と言われて実感が湧かないのも当たり前ですよ。普通に過ごしていたらそんな場所に行けるわけありませんので。でも馴染みがないだけです。」
「そんなものですかね。」
「ええ。現にこの会社の社員には異世界からきている従業員も沢山います。社長も異世界の人ですから。」
「え、社長も?」
驚いた、見た目だけでは分からないものだ。
この子曰く、異世界人は沢山人種がいるようで明らかに人間の見た目とかけ離れたものも居れば、自分達のように普通の人間の見た目の者も居るらしい。
「エルさんは、異世界人ですか?」
「ええ、そうです。私もこの世界の人間ではありません。」
この子は呆れた表情を浮かべつつ当たり前のように答えた。
「もういいですか、質問は。」
「あ、はい…。」
機嫌が悪そうに見えたので思わず遠慮してしまった。
ガチャ…
部屋の扉が開き、社長が部屋に入ってくる。