第2話 【 絶対 】
「えーと、どちら様?」
その女の子に尋ねる。
「クズ、貴方を連行します」
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目がさめると椅子に拘束されていた。
(痛…)
頭がズキズキと痛む。
原因はあの女の子が 連行する と言った途端、複数の男が俺の家に入ってきて押さえつけられ、頭を殴られ気絶したからだ。
しばらく周りを見回して場所を確認しようとするが、まったく見当がつかない。
ガチャ
後ろのドアが開き、足音が近づいてくる。
「こんにちは、青年。」
若い女性がそう言いながら向かいの椅子に座り、そして俺を連行した女の子がその隣に立っていた。
若い女性は美しかった。
金色の髪に赤い瞳、透き通るように白い肌。
そんな女性を前にしたら言わなければいけない言葉がある。
男なら誰でもそうするだろう。
「こんにちは、初めまして。唐突で申し訳ないのですが家に返してください。お願いします。」
俺は早口でそう言った。
「黙ってください。」
俺をクズ呼ばわりする天使からのお告げ。
目がゴミを見るように見てきます、怖いです。
すると椅子に座った女性が微笑みながら俺に言う。
「帰ってどうする?自殺志願者。家に帰っても絶望しかないだろ?」
その通りである。
「会社の人間に騙され、一生かかっても返しきれない借金。これからの人生、金を返すだけの人生になるくらいなら死んだ方がマシだと思っているだろ?」
彼女の言葉は何一つ間違っていなかった。
「…その通りですよ。あなたの言う通り、俺にはもう絶望しかない。未来なんて望めない、絶対に無理なんです。」
「でも、それを打破できる方法があるとしたら?」
俺は目を見開き彼女を見た。
「絶対無理じゃなかったのか?」
「!!…」
彼女は俺をまっすぐ見つめていた。
「もし、君がもう諦めてしまうなら引き留めはしないし、死にたいのならここで殺してあげよう。誰にも知られることなくこの世とさよならできるだろう。」
顔色一つ変えずに俺に告げた。
「君の前には今の現状を打破できる可能性がある。だけどその道は今まで生きてきた中で最も苦しく、辛く、その道を選んだことを後悔してしまうかもしれない。」
しばらくの静寂の後、女性はこちらに近寄ってきた。
「難しく考えなくていい。単純にしようか、今ここで私に殺されるか、最後の悪あがきで1%程度の可能性にかけるか。」
彼女は俺に銃を向けていた。
その顔は相変わらず優しい表情だった。
女の子は何もせず当たり前のようにこの状況を見ている。
「さあ、決めろ。」
彼女にそう告げられて体が強張った。
緊張しているのか自分の意志とは関係なく力が入る。
唇が震え声もしっかり出るか分からないが、俺は答えを出した
「俺は…」