第1話 【 三つ目の徳 】
唐突すぎて意味が分からなかった。
なぜこの俺が?なにもしてないのに?
「社長、いきなりすぎて事態がよく飲み込めないのですが…」
「悪くない話だと思うよ?若くして社長なんて。お金には困らないし、女の子にもモテるよ?それに僕は君のような若く未来ある子にこの会社を託したいと常々思っていたんだ。」
「いや、社長」
「どうするの?答えは今聞かせてほしいのだが?」
俺は考える。
これはドッキリだったりしないか?
いや、ない。そんな和気あいあいとした職場ではない。
それ以前に他人の功績で社長に成り上がってもいいのか?
いや、でも今なら社長になれる、それに社長になってしまえば、企画書を提出した本人を首にすることもできる。
今はとりあえず受け入れて、後々考えるのもアリ…
そして俺の出した結論は
「お引き受けいたします。」
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そのあとはよく覚えていない、仕事にも手につかず、気が付けば帰宅していた。
「三つ目の徳…」
三つ目の徳は社長になるということだった。
今になって緊張やらいろいろな感情が押し寄せてきた。
(久しぶりに楽しくなってきた…!)
その日の夜はなかなか寝付けないこともあり、ゲーム攻略が捗った。
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朝目が覚め会社に向かう。
いつもは電車だが、俺は気分が高まりタクシーを使った。
VIP感を味わいながらタクシーを降り社内へと向かう。
「おはようございま…す?」
社内の様子がおかしかった、社員が全員出社していなかったからだ。
「なんでだ?…」
早めに出社したとはいえ、誰も居ないのは変だ。
俺は不思議に思いつつ自分のデスクの上のパソコンをつけた。
不意に目についたネットニュース。
俺は目を疑った。
そのニュースの記事には、俺が社長になるはずだった会社の名前とその会社が倒産したという内容が書いてあった。
俺は騙されたのだ。
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あのニュースから数日が立ち、俺はいろいろなことを知った。
会社の資料を見て分かったこと、自分の会社はかなり悪徳だったこと。
社長、社員共々、夜逃げしていなくなっていたこと。
俺が入社して間もない頃から、俺は名前や身分を悪用され、すでに社長にが出ていたこと、つまり俺は最初からあの日、全ての責任を背負わすためだけに雇われていたといこと。
「…はぁ~。」
俺は絶望し、大きくため息をついた
俺の背負わされた借金は、12億円。
自己破産申請も通らず、まさに人生が詰んだ。
「何が三文の徳だ…」
たった一日で天国にそしてまた一日で地獄へと落ちた。
幸いなことに俺の家族はすでに他界しており、親戚も居ない、天涯孤独だから俺が死んだとしても誰かが関肩代わりすることはない。
「よし、死のう。」
俺はそう決めた。
ピンポーン!
誰かがチャイムを押したが俺は居留守を使った。
ピンポーン!ピンポーン!ピポピポピピピピPPPPPPPP!
「うるっせぇぇ!」
俺はあまりに非常識すぎるチャイムにキレて腹いせに怒鳴りつけてやろうと思い、扉を開けた。
「うるせぇんだよ!常識を考え…」
俺は目を点にした
そして思った。
(天使…)
そこにいたのはとてもかわいらしい女の子だった。
それも天使と思うほどだ。
「…人間の屑のくせに、こっち見つめないで頂けますか、気持ち悪くて吐き気を催します。」
悪魔でした。