04「あたしの名前」
地下へと続く梯子は二本あった。
点々と設置された光を頼りに、下へ下へと進んでいく。
「滑りやすいので気を付けてよ。ケガなんてされたら私の評価が落ちるから」
下の方からウニちゃんの声が響いた。
すでに地下通路に到着しているみたいだ。
あたしじゃなくて自分の心配ですか……
ディペンダーってこんな人ばっかりなのか?
ようやく地下通路に足を着けた時、体力を使い果たしたあたしはその場に座り込んだ。
「もう無理……」
「遅かったわね」
「……あたし、一応保護される対象ですよね。ペースを合わせてくれてもいいんじゃ」
「無駄に長い脚を持ってるくせして、むしろどうして付いてこれないのかが不思議だわ」
「そこは褒めろよ」
「ほら、早く。先に行くわよ“クマ子”」
……クマ子?
ガシッ。
「ちょっと待て」
先に歩き出そうとするウニちゃんの腕を掴んで問う。
「今、“クマ子”って聞こえましたけど、気のせいですよね?」
「気のせいなんかじゃないわ。クマ子、あなたの名前よ、いいでしょ。だって“被召喚者”って呼びづらいし、“あなた”って呼んであげるほど優れた人間には見えないし」
おいおいおいおい。
「それって、パンツだよね! 絶対、パンツから付けたよね!」
あたしの名前を下着から付けるな!
っていうかそもそもくまさんはウニちゃんが選んだやつでしょ!
「あら、そんなに喜んでくれて嬉しいわ。何だったら名字も付けてあげる。そうね……ツルペタ。ツルペタクマ子があなたの名前よっ♪」
うわー、なんて無邪気な笑顔。
表情だけ見れば『お姉ちゃん、私、お姉ちゃんのこと、だーいすきっ♪」とでも言いそうなのに……
「どうしたの、ツルペタ」
「せめてクマ子でお願いします」
「仕方ないわね、こっちよクマ子」
おいでおいでと手であたしを誘うウニちゃん。
もはやそれはペット扱いじゃないですかね。
すごく嫌な名前を付けられたことに悲しみを覚えつつ、
あたしは立ち上がって、まるで迷路のように入り組んだ地下通路を歩きはじめる。