30「ポテトスティック、ミルクキャラメル」
あたしはウニちゃんの方を見た。
(ウニちゃん、どういうことなの?)
(馬鹿、私だって知らないわよ)
アイコンタクトで会話する。。
「キョウイチ、オマエはこれをどう分析している?」
『バリボリボリ……なくなりました』
「そんなことは分かってる」
『ポテトスティックの話ですよ……そうですね、一言で言えば何が何やらサッパリという感じです』
「男が去っていくタイミングを考えると、奴は遠距離から河原のトゥキープオーダーを破壊したようにも見えた。その可能性は?」
『ウニさん、どう思いますか?』
「えっ、私?」
「何を驚いている。破壊されたトゥキープオーダーの持ち主はオマエだろうが」
「そうね、ナスカの予想通りなんじゃないかしら」
『映像を見る前はどう考えていました?』
「……それ聞く必要ある?」
『大アリです』
「……分からないわ」
『分からない?』
「誰がやったなんて考える余裕はなかったから。シャレコを壊されて気が動転してたの。仕方ないでしょ。まさかあんなことになるなんて誰だって予想できなかった。そうでしょ、クマ子」
「え、ええ。そうね」
『そうですかね、私は違うと考えていますが』
「何でよ、じゃあ他に誰があんなことできるって言うの?」
『クマ子さんがいるじゃないですか』
「えっ?」
キョウイチさんの発言を聞いて、ナスカさんがあたしを見た。
「はっ、頭おかしいんじゃないの?」
『そんなに変でしょうか』
「だってクマ子は被召喚者よ」
「俺も河原と同意見だ。拘束された奴が犯人ではないとすれば、怪しいのは明らかに姿を消した男だろう」
『……と二人が言っていますが、クマ子さんどうですか?』
うわー、振って来たあ。
あんまり嘘は付きたくないけど。
大森さんとの約束もあるしな……
「……同意見、です」
『あなたのパンツに誓えますか?』
「なっ、何でパンツ」
「キョウイチ、下らないこと言うな。それよりどうやってあの距離から攻撃できたのか、知りたいのはそっちだ。男の力の正体が分からなければ、また同様の被害を受ける可能性が出てくる。さすがにそれはマズイだろ」
『……分かりました。無駄だとは思いますが、一応調べます』
ふー、助かったー。
その時、ナスカさんの携帯が鳴った。
「――ナスカだ……分かった。すぐに行かせる。河原、エネ車が準備できたそうだ」
「……本当にやるの?」
「クビになりたくないならな」
「ナスカも手伝ってよ。献エネは四人必要なんでしょ?」
「一人はチサトに頼んでおいた。俺は午後から昨日の男が搬送された病院に行ってくるからいけない。誰か一人親切そうなやつを探せ」
『クチャクチャ私が行きますよ』
「んなことできるわけねえだろ。オマエがいない間に事件が起きたらどうするんだ」
『チルルがいます』
「……い、る」
あっ、そういえば忘れてた。
キョウイチさんが名前を呼んで、その女の子に目を向けた。
映像が途切れるまで、一言もしゃべらずにスクリーンを見上げていた彼女。
「でも……行くのはわた、し。キョウは留守ば、ん……ね?」
「げっ、チルル来んの?」
「ウニ、また失敗しない、か……監視」
「アンタねえ……」
「よし、これで決まりだな」




