29「謎の青」
『シャレコのエネルギーが切れかけ、一時的にこちらとの回線が切れました。すぐに再開しますよ』
キョウイチさんの言う通り、間もなく映像が再生された。
……あれ?
再び映った映像には切れる前と一つだけ違う所があった。
あたしたちがいる位置から二ブロックほど離れた場所、
そこに新しい青い丸が出現していた。
「聡一朗、これは俺じゃないよな」
『はい』
その数秒後に更に青い丸が、今度はあたしたちより東側の通路から現れ、同時 に左右の映像にナスカさんの姿が映った。
「これが俺か。ならこっちの青い丸は」
『不可解な現象です』
一方、あたしたちが映っている映像にへも変化が現れた。
ウニちゃんに拘束され苦痛に顔を歪める男性。
その傍らで膝を付いているあたしが手を伸ばしはじめる。
もうすぐシャレコを壊してしまう場面だ。
でもそれよりあの青い丸は……
『監視カメラに映ってないんですよ、男らしい人影が何も』
「コイツが今立っている位置はカメラの死角か」
『ええ。ですがあそこまで辿りつくまでにカメラに映るはずなんです。しかしどの映像にもそれらしき姿がありません』
「念のため聞くが、そもそもこれは人間だよな」
『スキャンした結果、身長百六十センチ前後、推定年齢十代後半の男のようです』
「……あっ」
そして今度は左右の監視カメラ映像が切れ、
中央のENEデータ映像だけが残される。
「今、こっちの映像が切れたのは何故だ?」
『原因不明ですが、本当の問題はここからですバリボリ。よく見ておいて下さい』
シャレコを含めて、現在存在する丸の合計は五つ。
ウニちゃん、シャレコ、あたし、ナスカさん、そして正体不明の男性。
それら全ての丸が映るように映像が拡大され、丸が徐々に人間の形に近付いていく。
『まず、ウニさんのトゥキープオーダーであるシャレコが破壊されます』
キョウイチさんの言葉に導かれるように、シャレコが打ちあげ花火のようにバラバラに拡散。
画面上から消滅する。
『次にナスカさんが二人の元までバリボリ』
子どもの赤いシルエットが、もう一つの赤いシルエットであるあたしを突き飛ばす。
青いシルエット、ナスカさんがそこへやってきた。
『この直後です』
その時だった。
正体不明の男性がその場から動きはじめる。
あたしたちとは反対側の方へ、やけに遅い速度で。
そして――
「……消えた」
――それは、心霊映像でも見ているかのようだった。
男性の形をした人影が徐々に透明化していき、最終的には完全に見えなくなる。
映像はそこで終わりだった。




