03「くまさん」
後ろを向いて服の上から下着を合わせてみる。
うわ、悲しいほどぴったり。
いやいや、そんなはずは。
子ども用でしょ……これ。
「……んーと上は少しサイズが小さいかなー?」
「……ハア」
「今、溜息付いた?」
もしかして気付かれた!?
「別に……じゃあ本部から現時点での身体データを再送信してもらうわ」
「身体データ?」
その時、ウニちゃんが抱いているドクロの眼が光った。
それ、もしかして機械か何かなの!?
そう思っているうちに目から光線が放たれて、空中に小さなスクリーン画面が現れる。
なーんか嫌な予感。
「あそこに大きな塔みたいなものが見えるでしょ。あれがセントラルタワー。半径千五百キロ範囲のENEエネルギーデータをスキャニングしてくれるの。人間の身体も言ってしまえばENEエネルギーの塊だから、スキャニングしたデータを身体データに変換すれば、顔の形から内蔵の位置まで誤差0.01%以内の正確さで算出してくれる」
「つまり、今調べるってこと?」
そ、それはマズイ。
どうしよう……
「早速来たわよ。被召喚者番号190091……性別女性、肉体年齢想定十五歳から十六歳。身長は百五六十センチ。スリーサイズは上から」
「はいはいすみませんでしたすみませんでした勘弁して下さい」
「ふん、嘘付きは大人のはじまり。サバ読みなんて見苦しいわよ」
あたしを断罪するようにびしっと人差し指を向けるウニちゃん。
嘘付きだなんて……そんな言い方しなくたっていいじゃない。
ちょっとした乙女心じゃないの。
「ほら、早く履きなさい」
「まさかここで履けって言うの?」
「恥ずかしがる必要ないわよ。ここにいるのは私とあなただけ」
「でもここ、あのタワーから見られてるんでしょ?」
「大丈夫、セントラルタワーの自動警備システムは完全機械制御型。調査庁の上層部しか映像アクセス権はない。通常の警備なら今みたいなエネルギースキャニングだけで充分だし、犯罪者の顔の特定とかそんなんじゃない限りデータを映像化して見るなんてことできないわ」
「要は撮影はされてるけれど、誰も見ないから大丈夫って言いたいのね」
「そうよ、ほっとしたでしょ」
「その穴の中で着替えさせて」
あたしの言葉を聞いて、ウニちゃんはハン、と嘲るように笑い、
垂れた前髪を指にくるくると巻いた。
「別にいいけど? 言っとくけど地下通路は調査庁の管理施設よ。リアルタイムで警備室のスクリーンに映りたいド変態ならぜひどうぞ」
プライベート空間ゼロってわけ?
……ここ、絶対監獄か何かでしょ。
「あーあー分かったもういいわよ、ここで着替える」
「分かればいいわ」