表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/40

23「あたしの名前2」

 

 

 

 三階にある、調査部特別課の事務室内。

 部屋の中心に通路を作り、四台ずつ背中合わせにデスクが置かれている。

 入口すぐ横には応接用のソファ、そこで一人の女性が雑誌を読んでいて、

 デスクにいる二人の男性も合わせると、合計三名の人が事務室にいた。


 みんなあたしの先輩だよね……よしっ。


 自分の職場に足を踏み入れたあたしは、手に力を込め、大きく息を吸い込んだ。


「ほ、本日からっ、特別課に配属されることになりました。み、(みやこ)肖羽(しょう)と言います。よろしくお願いします!」


 この自己紹介で名乗った自分の名前、それは一晩じっくり時間をかけて決めたものだった。


 昨晩、『ぴったり名付け番』というインターネットサイトにアクセスした。

 イエスかノーで答える百の選択問題に回答すると、PC画面の『あなたにピッタリの名前はこれです!』の表示の下に、名前の候補が現れるのだ。

 あたしの場合、現れた候補の数は五百以上だった。


 結局、自分で選ぶんかーい。


 サイト名詐称疑惑に対して軽く突っ込みを入れつつ、候補全てに目を通し、消去法で候補を八つまで絞った。

 その後、日が変わるまでうんうん唸ったのだけれどちっとも決められず、やがて疲れのせいで眠気が襲ってきたので、あたしはハつをメモ用紙に書いて裏返し、運任せで一枚を選択することにした。


 そうやって選んだのが『都肖羽』という名前だった。

 現実の自分のイメージと若干乖離している感は否めないけれど。

 でも、そんなことは大した問題じゃない。

 名前が何であるかより、『ツルペタ家』の名を捨てられることの方が重要だ。

 これから、『ミヤコ』とか『ショウちゃん』みたいに呼ばれるんだ。

 『クマ子』なんて呼ばれ方とはこれでオサラバだっ!


 ……と思っていたのだけれど――

 

「私は日野南、よろしくクマ子」


 と、ソファから返事が来たかと思えば、

 デスクにいた二人からも、


「クマ子ちゃん、よろしく席は俺の隣ね♪」

浅岡(あさおか)正巳(まさみ)。みんなはマッさんと呼んでいる。クマ子もそう呼ぶといい」


 ――どうやら時既に遅しだったようです。


「クマ子どうしたの? そんな哀しそうな顔して」


 あたしの隣にいたウニちゃんが不思議そうに尋ねてきた。

 いやいや、原因はあなたでしょっ!


「何でもない」

「じゃあいいけど」

「……はぁ、ここでもクマ子か」


 仕方ない、これから出会う人達に期待しよう。

 願いを静かに胸の中に秘めるあたし。

 

 部屋にいた三人はどこかへ出掛けようとしていた。


「クマ子ちゃん、またね~♪」

「は、はぁ……」

「河原、形式上とはいえ謹慎中の身だ。くれぐれも身を慎めよ」

「マッさん、分かってる。日野、ナスカは?」

「ガキ、私を呼び捨てとはいい度胸ね」

「日野こそ子ども扱いし過ぎ。おっぱいでかいからって……イタッ!」

「ナスカはキョウイチの所。早く行って、初任務の大功績(・・・)をパパに報告してやりなさい。きっと喜ぶわよ」

「……日野、性格悪い。きらい大きらい」

「お互い様」


 日野さん達がいなくなると、べーと出していた舌をひっこめたウニちゃんが、あたしの席を教えてくれた。


「クマ子、次は分析調査室(アナライズ)に行くわよ」

「うん」


 三階から階段を使い四階へ。

 移動途中、他の調査官たちを何度か目撃した。

 誰もが警察官のような青色の制服を着ている。


「ウニちゃん。調査官の中で、ディペンダー(あたしたち)だけ私服って、ちょっと罪悪感あるね」

「どうして? 貧民の中を行く貴族みたいで私は凄く愉快よ」

「ちょ、超問題発言」

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ