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21「2,500,000」

 

 

 

「河原、なぜ必要以上に侵入者を痛め付けた?」


 両肘を机の上に置き、大森さんが尋ねる。


「ごめんなさい……」

「謝罪の言葉は聞いていない。理由を聞いている」

「……侵入者が“虹”かと思って」

「今でもそう思っているのか?」

「……間違っていたかもしれません」

「彼は猪熊吾郎、三十八歳。十中八九、ただの一般市民だ。地下を出てすぐに病院に緊急搬送された。小康は保っているが。つまり、オマエが行ったのは完全な過剰防衛、という訳だ」

「……はい」

「映像で見る限り、この時のオマエは明らかに感情的だ。冷静な判断でしたとは思えない。俺の指示は何だった?」

「……被召喚者の保護が最優先。追跡のみ、過度な接近は禁止」

「オマエのトゥキープオーダーは対“虹”戦を想定して生み出された最新バージョン“シャレコ”。化け物相手に使用する力だ。それを一般市民に使ったらこうなることは分かっていただろう」

「……すみません」

「エネルギーの補充もしやがって。これだけでも六万以上のエネルギー損失だ。河原、オマエは自らが生み出したミスによるマイナスを背負う覚悟を持っているのか?」

「あ、ありますっ!」

「では、どうやって」

「それは……そ、早急に考えて……」


 言葉に詰まるウニちゃん。

 ……大森さん、こわーい。


「被召喚者、」

「は、はいっ!」


 今度はあたしっ?


「映像の話に戻るが、スキャナーで分析したところ、被召喚者の指が触れた瞬間、河原のトゥキープオーダーからENEエネルギーが一瞬にして流出、空気中に飛散した。こんなふざけた現象は過去に類を見ない。納得のできる説明が欲しい」


 やばい、どうしよう。

 説明って言ったって、あの時のことは自分でも……


「あの、何であんなことができたのか、自分でもよく分からないんです」

「触ったら勝手に壊れた、とでも言いたいのか?」

「あの時、あたしは男性を助けたくて。でもあの糸は硬くて自分の力ではどうしようもなくて……でも、頭の中にもう一人の自分みたいなものが現れて……」

「もう一人の自分。それは別の人格ということか?」

「それも分かりません……次第に自分ともう一人の自分の境がなくなって、そしたら助けられないと諦めていた気持ちが逆転したんです。この人を助けることぐらいあたしにはできるはずだって。そしたらあんなことが起こって……」

「……つまりあれは故意ではないと言いたいのか?」

「えっ?」

「トゥキープオーダーが破壊されたのは河原の落ち度だが、かといって加害者に罪がないはずもない」

「か、加害者? もしかして、あたしがですか?」


 何か恐ろしい予感……


 その時、大森さんはキーボードを何度か叩いた。

 机の上にあるプリンターが作動し、そこから数枚の用紙が出てくる。


「もう充分だ。ここで今回の事件について二人の処遇を伝える」


 大森さんはその用紙を手に取ると、ウニちゃんとあたしにそれぞれ渡した。


 折り返して広げてみる。

 その瞬間、あたしの脳は思考を停止した。


 そこには『請求書』という文字と簡単な文書。

 そして中心の、大量に並んだ『0』。

 一、十、百、千、万、十万、百ま……

 二百五十万円っ!?


「ここここここれは何ですかっ!?」

「トゥキープオーダーの製作費五百万、端数はサービスしてやる。二人で返せ」

 

 

 

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