02「ディペンダー」
……えーと。
会って早々、変態呼ばわりですか?
「あなたは?」
「私はディペンダー、河原ウニよ」
「ウニ、可愛い名前ね」
「えっ、ほんと? ……ってそ、そんなことないっ!」
俯いて、ドクロのぬいぐるみをギュッと抱きしめる女の子。
照れてるのね、可愛い。
「ウニちゃん、ディペンダーって?」
「そ、そんな風に呼ばないで」
「どうして、すっごく可愛い名前だよっ?」
「……ディペンダー、トワイライトシティの調査庁特別課の調査官の通称」
「あ、無視した」
「うるさい。私は遊びに来た訳じゃないの。これは任務、あなたを保護しに来たんだから」
「保護しに来た、あたしを?」
「あなたは被召喚者。突然、この世界に現れた。トワイライトシティの住民同様にね」
「突然、現れたって……でもウニちゃ……あなたも今ここに突然現れたよね」
「何言ってるの? 私はあの地下通路から来たの」
少し後ろの二、三メートル先の地面を指差すウニちゃん。
目を向けると、草原にマンホールのような穴が開いていた。
「あたしは、違うの?」
「被召喚者は過去の記憶を失った状態で突発的に出現。召喚場所は決まってトワイライトシティ周辺十キロ以内の草原エリア。位置はランダム、ただしパターンは存在。十六か所ある地下通路の入り口から半径五メートル以内。例外はない……そして」
肩からぶら下げた大きめのポシェット。
そのチャックを開けてがさごそしはじめるウニちゃん。
中に入っていた白いものを両手で包んで、あたしに差し出す。
受け取って広げてみるとそれは……
げっ。
「……何でこんなもの渡すのよっ!」
「被召喚者は服の下はすっぽんぽん、これも例外はない。だから下着持参が通例。ちなみに今年であなたが六人目よ」
手に広げたピンク色の下着。
くまさんの刺繍が入っている。
……マジですか。
「一応聞くけど、これウニちゃんの私物じゃないよね?」
「当たり前でしょ。事前に街で買ってきてあげたんだから感謝しなさい」
「……そっか」
くまさん、あたし、あなたに似会いますかね。
黙って下着を見つめていると、
ウニちゃんがあたしの手から下着を取り返した。
あたしの考えていることが伝わったのかな、ちょっと不機嫌そうだ
「いらないなら別にいいもん! すっぽんぽんのまま街を歩きなさい。でも言っとくけど、その服薄いから透けるんだからっ」
……本当だ。
「いる、下さい」
「……最初から素直にそう言えばいいのよ」
ぺこぺこしつつ再度くまさんを受け取るあたし。
それにしてもウニちゃん、可愛い顔に似合わず性格悪いな……