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10「侵入者の告白」

 

 

 

「女?」


 意外な返答に目を丸くするウニちゃん。


「先月、突然別れを切り出された。好きな野郎ができたって……これまでの自分を考えりゃ自業自得だったが、それでも……諦めきれないんだ」

「……諦めきれないなら、何で街を出ていこうとするのよ。逆でしょ?」

「そいつ……結婚するんだ」

「えっ?」

「だからもう……忘れようと思ったんだ」

「そんなことで地下に侵入したっていうの?」

「そうさ……この街にいる限り彼女との思い出を消しさることは不可能だ。過去を忘れるには思い出を作り過ぎた。公園、行き付けのレストラン、自宅までの帰り道、どれも女と過ごした思い出で一杯だった……忘れられるはずもない」


 この人――


「皮肉な人生だと自分で嘲笑ったよ。ここに来た時には、失った記憶の分まで濃い時間を刻もうと願っていたのに、今の俺は深く刻み過ぎた時間を忘れられないことに苦しんでいるなんてよ」


 ――かわいそうな人だ。

 その告白を聞いて、あたしはいつの間にか彼に同情していた。

 そして、同時に確信もしていた。

 この人は悪い人じゃない。


「悪いことをしたってことは自分でもよく理解している。でも……他にどうしようもなかった」


 凶器でウニちゃんを襲ったんだから、さすがに無実にはならないだろうけど。

 でも、お願い、ウニちゃん。

 彼を救ってあげて――


 その願いが届いたかのように、ウニちゃんが立ち上がる。

 ナイフを横に放り投げ、真上から彼の顔を見下ろす。


 そして、次に彼女の口から出た言葉に――


「……嘘付き」


 ――あたしは耳を疑った。


「シャレコ、圧縮」


――圧縮率110%。拘束対象の肉体を損傷する恐れがあります。


「ぐっ、ぐあああっ!」


 突如として暴れ出す男性。

 彼の身体を拘束している糸がぎゅるぎゅると締め付けているようだ。

 

「ウニちゃん、どうして!」

 

 

 

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