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俺は喋る剣に会う

 片手剣。店の扱い方を見ると、安めで買いやすい武器なのだという事が分かる。


 様々な武器が置かれた通路の剣が置かれているスペースの入り口。

 剣の初心者はコレから始める。みたいな入門編として樽に纏めて入っていた片手剣を俺は別に買う気はなかった。アレックスは魔法しか使わないみたいだから怪しまれるんじゃ無いか?と思ったからだ。

 だけど、売られ方が特殊な為興味が湧き物色してみることにした。


 まず気づいたことは、樽に入れられた剣は安めに売っているみたいだが、全部が同じ片手剣という事はなく数本が同じデザインの剣が混じってはいる事だ。


 何本か、カッコいい。と思えるものを物色し、一本だけ他のと違う片手剣を見つけた。


 そう、先程レガローさんが剣に全く興味を示さなかったアレックス(俺)が剣を見はじめた事に気を良くして、安くするぜ。と言った後に聞こえた喋る剣。

 そいつは今も買ってくれ、買ってくれと独り言のように言い続けていたんだ。

 こいつの声にびっくりしてレガローさんを無視するかたちになってしまったが、本人は気にしてないようでクレアと談笑している。


 試しに持ち上げて、鞘から出してみる。うん、普通によく研がれている剣だな位しか分からない。


『まさか、あたしを手にとってくれるなんて⁉︎』

「……」

『ここに置かれてから、誰もあたしを試しに持ってもくれなかったのに!』


『デザインが古いだの、すぐ壊れそうだの、見つける度に酷い罵られ方をしたのに。この子は分かってくれるのね』


『あたしを買っても良いわ。この声が聞こえないなら使い手じゃないみたいだけど、あたしの全てで貴方を護ってあげるわ。特別なんだからね‼︎ あたしは誰にでも付いて行く、そんな軽い女じゃないの。本当なんだからね』


 刃を見たり、鞘のデザインや重さを使う事を想定して片手で持って見たが何かしっくりくるなぁ。と確認をしていると、片手剣は俺には聞こえてないと思ってる癖に愚痴り、そして自分に言い聞かせるように語っていた。


 まだ買うか決めてすらないのに、自分で買われる事を決める片手剣。軽い女じゃないと言うが、物理的にも性格的にも軽かった。



「うーん」


 悩んでいると、レガローさんが剣を確認する俺に気付き近づいてきた。


「アレックス、それにするのか?」

『お持ち帰り? あたしお持ち帰りされちゃうの⁉︎』

「いやぁ、まだ決められなくて……」

「その片手剣は、その樽の中でも初心者には一番良いやつだ。刃渡りも重さも片手剣を始めるならちょうど良いぜ。今なら手入れの道具も譲ってやるよ」


 どうしようか、幾ら異世界だとしても記念に喋る剣なんて買っても煩いだけだしな。

 でもそこまで勧めるなら買ってみようかな。

 俺は勧められたら断りにくいんだ。服を買いに行った時もこれが流行だの、お、お似合いですよ。何て言われると、勧められたのを断らずに結局いつも買ってしまう。

 だけど今現在、俺はアレックスなのだ。


 クレアの意見を聞くため顔を見ると、余り無駄遣いはしないでね(はぁと)と眼以外を笑顔にさして俺に訴えかける。クレアって器用だな。


「あの、レガローさん。この剣は確かになぜか手にしっかりくるんですけど……」

「何だよ、はっきり言えよ。だがその剣のデザインはダサくはないからな」

「そうじゃなくて、あの、何でこの剣だけ喋るんですか」


『えっ?』

「あぁっ?剣の声が聞こえるのか」

「アレックス、何を言ってるの?」


 レガローさんは固まり、クレアは呆れる。二人とも信じられないものを見る眼で俺を見つめて来る。


 そして片手剣はブツブツ言ってる。最初から反応しなさいよだのこんな素直じゃない男の子は嫌だ。だのなんか言ってる。


 何だか異世界は何でもありな気がしてきた俺は、喋る剣に一々反応しないのが普通の対応だと思ってたけど違うようだな。

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