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俺は美少女と飯を食う

 コンコン


「……どうぞ」


 ノックの音が聞こえたがカーテンが掛けられた、人が寝ていそうなベッドから返事をする人が誰もいないので俺が返事をした。


「失礼します、アレックス、ご飯持って来たよ」


 クレアだった。俺が返事して正解だったようだ。扉を開けたクレアは、俺の寝てたベッドの横にある台にスープとパンを載せたお盆を置き、先ほど座っていた椅子に腰掛けた。


「アレックス、ご飯食べよう?」

「あ、うん」


 窓に立っていた俺はベッドに戻って腰掛け、クレアが持って来てくれたご飯を眺める。

 小さく切られた具といい香りのするスープと、丸いバターロールみたいなパン。スープもパンも二つずつある、クレアは自分の食べる分も持って来たようだ。それにしても、異世界でもスープはスープでパンはパンみたいだ。



「頂きます」

「いただきます?」

「……えっと、飯持って来てくれてありがとうクレア」

「当然だよー」


 両手を合わせ、普段の習慣どうりにそう言うとクレアに不思議がられた。異世界だから習慣が違うのか、誤魔化す為にお礼を言うとニッコリとして嬉しそうに食べ始めた。


「……」

「アレックス明日は外に出てもいいみたいだから、この前約束した商店街周りしようよ」

「…ああ、いいよ」


沈黙が辛いなと思った時、クレアが話題を振ってきた。俺は約束してないがアレックスはしたみたいだ。

 外がどうなっているか知らないので、一緒に見て回るのも丁度いいなと思い了承した時、クレアが目に見えて上機嫌になった。


 クレアってアレックスが大好きなのか。アレックスのフリをする事に決めたが、俺の良心がダメージを受け始めた。


「ご馳走様でした」

「ご飯も食べ終わったし、これ返して私は宿に戻るね。明日、迎えに行くから」

「おう、また明日」

「うん、また明日ね」


 俺が居た堪れなくなっている間に二人とも食べ終わり、今度は小声で言った為か疑問を持たれなかった。そして軽い言葉を交わしたクレアは、ニコニコと食べ終わった皿を載せたお盆を持って出て行った。


 特にやる事がない。

 ここは異世界だし、とりあえず日が落ちるまでは窓の外を眺め、クレアの言い方と他のベッドで寝ている人達の反応で夜は飯がなさそうだから大人しく寝転んでいたら眠気がきたのでその日はすぐに眠れた。



 ***


「アレックス、凄いよ。この魔法書クラスIIIだってー」

「へー」

「クラスIIIだよ?あんまり、売ってないよ?」


 翌日、俺はベッドの脇に置いてあったアレックス自身の持ち物である鞄を漁り、服を見つけ着替え終わると、丁度クレアが到着し、俺が居た治療院という所を出て、街を歩き商店街を周っていた。


 商店街を見て周った感想は、異世界だ。としか言えない。


 武器が普通に売っていて、それを装備している人達も見たし、おまけに魔法書?魔法もあるのか、すげえな。と思ったがどうやらクレアと話して分かったが俺は魔法が使えるみたいだ。


 正確にいうとアレックスが。

 クラスというのは他の魔法書を見て思ったが、魔法の複雑性と難易度で魔法書の値段と価値が分けられているみたいだ。そして、この店にはクラスIとクラスIIが殆どでそれ以上はあまり一般の人には売らないのか、クレアが先程言った一冊しか置いてない。


「ふむふむ」

「どんな魔法が書いてあるの?」

「ちょっと難しいかなぁ」


 試しに読んでみたが、アレックスの体だからか文字は読める。多分この体だから会話も普通にできるのだろう。

 この魔法書には雷とか光と闇とかの概念が書いてあり魔法の使い方も書いてあるのは判るのだが魔法の使い方が分からない為、試し方すら今の俺には分からない。


「じゃあ、次はどこ行く?」

「レガローさんの所行こう、防具も武器も壊しちゃったし」

「よし、行くか」


 俺は本を戻し、クレアと手を繋ぎ店を出る。そう、まるでデートだ。なんかアレックスに会ったら謝りたい事が増えていく。まぁ、クレアに触れているのはアレックスの体だし、少しぐらいなら許して欲しいが……



 そんな感じでアレックスにあった時の言い訳を考えていたら、レガロ金属加工店と書かれた看板の店に着いた。


「こんにちはー」

「おう、アレックスにクレア、いらっしゃい。デートか?」

「ち、違います。次のクエストに合わせて色々買い足しているんです」


 レガローという人は筋骨隆々で渋いおっさんだった。さぞかしモテるんだろうなーという俺の僻みは置いておいて話は進んで行く。


「聞いたぜ、よく生きて帰れたな」

「アレックスが守ってくれたんです。でも折角安く譲って貰った革の鎧、駄目にしてしまいました……」

「いやいや、生きて帰れただけで儲けもんさ」

「はい、なので一番安い革の防具売ってください」

「鎧の方がいいんじゃねぇの、お代は次の報酬でいいからさ」

「いいんですか?じゃあ、そこの鎧を一つ下さい。あとは……」

「嬢ちゃんはやっぱり見る目があるな。嬢ちゃん達が死んだら俺ぁ大損だ。ガッハッハ」


 クレアが凄い。抜け目がないというか交渉が上手いというか。俺の分の防具もちゃっかり買っている。いや、ツケて貰っていると言ったほうが正しいのか?


 俺も店内にある剣などの武器を物色してみた。男なら剣に浪漫を感じない方がおかしいと思う。


「おう、アレックスもやっと剣に興味を示したか。安くするぜ」

『買って、買ってぇ、あたしの声が聞こえるなら、あたしを誰か買ってーー』


 無造作に樽に入れられている片手剣を物色していると、その中から声が聞こえてきた。

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