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森の狐討伐①

 ネーブルの森の入り口付近で傾く夕日に照らされながら、俺は一人野宿の準備をしていた。

 持って来たテントを張って薪を纏め、突然魔物に襲われても大丈夫なように障壁の魔法陣を設置し、薪に火を灯す。


「''ほむら''」


 アレックスの持っていた鞄の中に魔法について書かれた手記。それを読んで知ったのだが、魔法の詠唱と魔法名は魔法を使う事を自身に言い聞かせながら、使用する魔力の量と行使させる魔法の威力の調節の為に必要とされるものだという認識でいいらしい。

 だから本人がイメージしやすいやり方で魔法が発動さえすれば良い。

 みたいなアバウトな感じでアレックスは教わり、実際にそれで魔法を使える様になったみたいだ。


 まあ使えるものは何でも使おうと思い、俺もそのやり方で魔法の練習をしたらイメージしやすい単語を口にするだけで出来るようになった。


 そうして魔法で起こした火で小さくなってきた薪の中に新しい薪を加えて、持ってきた干し肉とパンを火に近づけ温める。


 炙られていく干し肉とパンを焦げないように眺めながら、異世界に来てから初めての野宿だな、と思った。

 街からこの森までは徒歩でも半日程で行く事が出来るため、クレアとラミナの二人と討伐依頼を受けると体力をつける為に森まで走って行く。

 森に着くと少しだけ休んでから直ぐに討伐対象の魔物を探して狩り、そして休憩してからまた走って街に戻ってしまう。


 別に何日もかけて魔物を狩りたいとかじゃ無く、いつも作業的に呆気なく終わるクエストに嫌気がさし始めたというのもあるのだ。

 この世界では人が簡単に魔物に殺されたり、盗賊に殺されるのが不思議じゃない。だから命を大切にして用事が終わると直ぐに街に戻るラミナの方針とかに文句は無い。


 だが、自分で考えて動けるようになれないとクレアとラミナの二人とはぐれたりした時に俺はあっけなく死んでしまうだろう。

 そんな考えもあったから今俺はこの森の前で野宿をしているのだ。


 十分に焼き色が着いたパンに柔らかくなった干し肉を挟み、一口食べた。

 一番安い干し肉とパンだったけれどお腹を減らしてから食べているからなのか結構美味しいな。と感じた。


 バリバリバリ


 少しだけの夕食を腹に入れて満足していた時、魔法陣が発動し障壁が俺の周囲に展開される。


「すんませーん。火を分けて貰っていいですかぁ?」


 障壁は人でも魔物でも生命体を近づけさせない為に張ったものだし向こうからは俺の姿は見えずテントだけ見えるようになっている。少しだけ警戒した俺の耳にはその声が酷く場違いな程、間抜けに響いた。


「すんませーん。あれっ? 寝てるのかな?」


 善人のフリをして障壁が解かれた瞬間、ブスリ。盗賊だった…

 そんな事は事件にすらならない。

 警戒心が薄い奴が悪い。こんな認識の異世界な為、俺は迷わず直ぐに発動出来る魔法を準備してから障壁を解いた。


「すんませぇーん。おお。あの、火が必要なんですよぉ。少しだけでいいんで分けてくれませんか?」

「……いいですよ」



 ……ビキニアーマーだと⁉︎


 ば、馬鹿な。魔法があってもそんなモノを着る奴がいたのか?

 俺は日が落ち、焚き火に照らされた目を疑う格好に動揺している事を知られないように、極めて自然にそのメロンを載せたアーマ女に火を分けてあげようと返事をして辺りを見回すと、俺が障壁を張った隣に見慣れぬロッジの様な煙突付きの家が建てられていた。


 こんな立派な家が建ってた覚えが無い俺は少しこの女を怪しく思ったが、テントと火をそのままに、置いてある自分の鞄を肩にかけ、立ち上がった。



「ついてきて下さい、コッチっす」

「あ、はい」


 どう見ても防御力が低いその装備で、堂々と歩く痴女は当たり前のように木材の扉を開け中に入って行く。


 俺も歩く度に形が変わる尻を見ながら中に入ると、直ぐに暖炉が目に入った。


「薪は入れてあるんで、後は火を灯すだけですよぉ」

「了解。''焔''」

「へー魔導士様だったんですかぁ。てっきり、術者かと思ってました」

 にんまりと大きな双丘に似合わない幼い顔でその女は笑う。さっきは暗くて分からなかったが、火が灯された明るい部屋で見た顔は結構可愛い部類に入ると思った。


「まだまだ修行中の身なんですけどね」


 彼女が言った魔導士と術者の違いは魔導士は魔法と魔法陣などの術、両方を使う者の事を指し、術者は魔法が使えない者を指す、この異世界で人によっては差別的で怒りをかう言葉なのだが…

 平然と言った彼女は俺の事を挑発しているのだろうか?


 薪が赤く燃え、部屋が暖かくなり始め、パチパチ、パキパキと音が響く室内。


「あれ、なんかマズイ事言っちゃいましたかぁ?」

 俺が黙ってそいつを睨みつけると戯けた調子でビキニアーマーの女が大袈裟に首を傾げた。

「まあ取り敢えず座って下さいよ。火もついた事ですし、今お茶出しますからぁ」

「はぁ、頂きます…」

 カチャカチャと面積が少ない甲冑を鳴らし、女はお茶の準備を始めたので俺は暖炉の側にあるソファーに腰掛けた。

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