思い立ったら即行動
簡単すぎる…
ツインモンキーを倒し街に戻り、冒険者ギルドで昼飯を食べながら俺はそう思っていた。
討伐依頼ってのはもっと、魔物を狩る冒険者と何としても生き延びたい魔物との死力を尽くした戦い、何時死んでもおかしく無い、男の仕事だと他の冒険者から聞いた。
だがラミナとクレア、二人と組んで行ったクエストは、毎回簡単に魔物を倒してしまい、汗をかくことすらないまま終わる…
先程のクエストもツインモンキーの番いは珍しいらしく素材は高額で買ってもらった。
財布は潤い、レガローさんにはツケを払えたし、この世界に来てから魔法も、剣術も覚えたが実戦であまり使いこなせた試しが無く全然強くなれた気がしない。
別に、魔物に攻撃を受けてボコボコにされたいとか、そんなドMじゃ無いけど、もうちょっとやりがいというか、達成感みたいのが欲しいな…
【それなら、一人でクエスト受けてみれば?】
【それいいな、森の主討伐とかやってみようかな】
俺のワガママな考えで次に受けるクエストが決まり、注文した料理を交換しながら食べるクレアとラミナに相談した。
「クレア、ラミナ」
「何?」
「何だ?」
「俺、次のクエスト一人で受けてみるよ」
「何のクエスト?」
「森の主討伐」
「えっ?」
「正気か⁉︎」
クレアはフォークを落とし、ラミナは勢いよく立ち上がって俺に詰め寄り、言った。
「悪いことは言わない、止めておけ」
森の主とは、ネーブルの森を根城にするC-ランクの魔物、蔓狐の事だ。
ヴァインフォックスは倒しても数週間後にまた蘇るスキルがあり、この前ラミナが一人で討伐していた。
ランクが高い魔物を仕留める事が出来ればランクアップの試験を受ける権利が1回だけ発生する。つまり、俺が一人で倒せばラミナに認められ、この街から他の国や街に行けるようになる。のだが、ラミナは反対らしい。
ヴァインフォックスは採取のクエストを受け、森に来ていたアレックスとクレアを襲った魔物だ。
駆け出しの冒険者が勝てるはずも無くアレックスが目眩しの魔法を使い、何とか街に逃げてきたらしく、その時の怪我を見たラミナが定期的にヴァインフォックスを狩っているからどれぐらい強いのか知っていて反対しているのだろう。
「自分の力だけで魔物を狩りたいんだ」
「っそうか…勝手にしろ‼︎」
「アレックス私もついて行きたいけど駄目?」
「うん。一人でやってみたいんだ」
「…わかった、絶対帰ってきてよね」
ラミナは料理を食べ終わり、代金を置きそのまま出て行った。クレアは反対していた訳では無いみたいだけど、二人ともアレックス(俺)が心配みたいだ。
本当に危なくなったら、全力で逃げるだけだ。逃げる為だけの魔法も数種類覚えているしな。
俺はそう思いながらギルドで森の主討伐依頼を受け、一人だけのクエストが始まったのだった。