6、朝の会話
「でも、急に猫耳なんて、どうしたのさ」
罵ってから岩屋は俺に聞いた。
岩屋は、基本的にほとんど誰ともしゃべらない。
唯一の例外が俺だ。
何故かは知らないが、入学以来、俺とはこうやって仲良く話しかけてくる。
服装はさすがに制服であるが、ローブを着たら、もっとそっくりになるだろう。
「いやさ、実はな……」
俺は、そう前置きをしてから、猫耳魔女っ子が現れたという夢の話を岩屋へした。
「へぇー、私そっくりな子が猫耳で、魔法使って、あんたを召喚したっていう夢かあ」
「そうそう」
もうしばらく、チャイムは鳴らないようだ。
俺は岩屋と、相変わらず話しこんでいた。
「そうなんだよな。不思議だろ」
「並行世界みたいなものなのかもね」
「たくさんの宇宙が同時に存在しているっていう、あれか」
「どっちかって言ったら、複数の可能性が同時に存在している、かな。まあ、そんな感じ」
つまり、俺が魔術師に召喚されるっていう世界もあるっていう話のようだ。
「ま、そんな話もあるってことだな」
俺は、そう言って、遠くを見た。
「そうね、一緒に暮らせるってのは、夢かもね」
岩屋が、そんなことを言った気がした。