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41、再会
坩堝の中は、不思議と心地よかった。たしかに、痛みは感じられない。それどころか、むしろ暖かさすら感じる。だが、声はザンザンと響いてくる。耳からの聴覚は頼りにならない。むしろ、脳に直接振動を伝えているという感じだ。何もしなくても、音が分かる。
「ねぇ、やっと来てくれたんだ」
懐かしい声が聞こえた。もはや眼は役に立たない。というのも、色彩の反乱は、目にまるで豪雨のように振り込んできており、目の意味がないのだ。だが、彼女の声だけははっきりとわかる。目の前にいるかのような雰囲気だ。
ゆるやかに坩堝の中に落ちていく俺に、岩屋は話しかけてきた。
「どうなの、今の感覚って」
「片栗粉溶かした液の中に、ゆっくりと沈んでいる感覚。でも、呼吸は普通にできてるけど」
「それはよかった。本当によかった」
岩屋は、今や肉体というくびきから解き放たれ、純粋な魂の記憶だけが残っているはずだった。でも、俺のことをおぼている。つまり、魂に刻み込むほどの記憶が、俺とのつながりであったということだ。
もしくは、単にまだ肉体の記憶が忘れないほどの時間であるか。




