32、魔術
魔術の準備は、思いの外簡単だった。それこそ、拍子抜けするほどに、単純な作りだった。
「いいかい。魔術というのは3種類ある。護符とも呼ばれる御札、詠唱による魔術詠唱、そしてこれからする魔法陣だ」
シャドウが言いながらも、ガリガリとチョークを使って魔法陣を描いていく。この部屋は、俺が初めてこの世界にきたときの部屋だ。ただ、リビングよりも少し広く、机とかも整理されている。
マハラは、何やら肩で息をしながら、それでも師匠であるシャドウを手助けしている。
「説明しておこう。この魔法陣は、マハラと同じ魂を探すという手はずになっている。一つはここ。そして、もうひとつはどこかだ。広兼は、そのもう一つのマハラの魂を探す必要がある。どこにいるかわからない。それでもいいな」
「はい、どこにだって探しに行きます」
「うむ。ならば始めよう」
魔法陣は書きあがったようだ。俺をその陣の中心に立たせ、俺の背中側にマハラを立たせるようだ。すでにしんどい様子のマハラではあるが、それでもまだ立っていた。
「全知全能なる神よ。我は今、そなたに伏する……」
魔法陣は自動的に発動するのではなくて、詠唱をすることによって初めて機能する。シャドウが詠唱しつつ、何やらかんやらをしていると、俺の足からミミズが這ってくるような、不快感が現れる。それがすごいスピードで太もも、腰、お腹、胸、喉とやってきて、目に収まる。そして次の瞬間、左目に激痛が走る。声も出せないほどで、思わずうずくまった。
痛みが治まると、左目は現実世界を見つつ、なにかビーコンを示していた。
「成功だな」
シャドウが俺の左目を見て、満足げにうなづいた。




