1、プロローグ
俺は、間違いなくベッドに入って寝ていた。それは天地神明に誓っていい。
だが、そうなると、今のこの状況が全く理解することができない。
「やった、お師匠さん、やっと召喚魔法に成功しました!」
「おやおや、やっとかい」
召喚?どういうことだ。
俺はそこでやっと今いる場所が、目の中に像として結び付くようになった。
「ねこ…みみ?」
目の前ではピョンコピョンコと飛び跳ねている、肩ぐらいまでの黒髪がまず目についた。
それから幼いと言った印象だ。もしかしたら14歳あるかないかといったところだろう。
手に持っている杖にも目が行く。墨のように黒い2本の枝がネジのように互いに巻きついている形だ。
服装もなにか違う。黒色のローブを着て、首元をスカーフのようなもので縛っている。
跳ねているおかげで、その中からスーツのような服が見え隠れしているのがはっきりと分かった。
ローブの裾は、太いオレンジ色の線が縫い込まれている。何か意味は分からないが、飾りのようにも見える。
最後に決定的に違うのは、頭の上についている猫耳だ。
跳ねている時も、その形は変わることなく。そして周囲を警戒しているかのようにせわしなく小刻みに動いている。
「何があったんだ……?」
「あなた、名前は?」
「え、鈴木広兼だけど……」
「いいこと広兼。あなたはここで暮らすの」
「……はい?」
俺は目の前の子が言っている意味が全く理解できない。
「こら、マハラ。そうではないでしょ」
「そうでした師匠」
師匠と呼ばれた人は、目の前の少女であるマハラとは違う。
猫耳なのは相変わらずだが、白髪だ。
そしてローブの裾が青色をしている。
何か意味でもあるのだろうか。
「さて、鈴木広兼、と言いましたね」
声からして、師匠は女性のようだ。
「あ、はい」
急に呼ばれた俺は、その人を見ながら言う。
「急に連れ出したこと、お詫びします。本来であれば人間は召喚できないはずなのですけどね。それこそ席次魔道師クラスでもない限り」
「はぁ」
急に言われて俺は混乱している。
「まあ、おいおい教えましょう。時間はたくさんあるのですから」
師匠は、笑いながら俺に話しかけてきていた。
どうやら、ここでずっと暮らすことになると、俺は覚悟を決めることにした。