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玉座の多い迷宮

作者: 片岡 一亭

 私が感じるに、最近、ずかずかと刈り取る庭師たちが増えてきたような気がする。彼らは薄暗い色合いで、いつもガス状のその身を漂わせているが、仕事になると途端に、嫌にくっきりとその形を現す。"彼ら"は同時に帽子とハサミと、まるで卸したてのようにぴかぴかのスーツに身を包み、ぼんやりと近づいてきて私の星座の花壇を切り取る。時として、何十万の砂塵で出来た積石をも手すら使わずに乱暴に蹴り飛ばすのだ。彼らはたかがガスで、実態はあくまで無い。私たちが彼らに刈り取られるものは、正確には一切無い。しかし、困ったことに彼らの動作はあたかも私たちの中身を本当に刈り取っているかのように見えてしまうので、たまに錯覚に陥ることもある。

 避難場所には船頭がいる。多くのものは数人の船頭だけが正しいと考える。彼ら大多数の頭の中は海で銀色に輝くものたちに大変似ている。無意味で効率を求めず、美しさだけをばらまくその姿は、一体誰の心配事を癒しているのかもわからない。


 さて、迷宮の話であったか。今こうしている間にも、手元には頼りないカンテラ、それもどうやら明かりの周りでは、やたらと細かいインクのしみの羅列のある紙くずが舞う、不気味なものを持っていることだろうと思う。いや、君はそれらの明かりを文明の奴隷と化した植物たちの墓場で補給できることはもう知っているだろう。明かりは太陽か、おごり高ぶる、万人の太陽か。無論、君は人々を照らす明かりを持っているのだから、この迷宮では玉座に座ることができる。そして指導すれば良い。人々に自分の光で、思うように。ただし、人によってその明かりの強さは全然違ってくるから、そこのところは、念慮すべきだ。君たちの弱点ときたら、ワイヤーで包まれたそれに違いない。鉄板とか、繊維質の植物で包まれているならいくらか安心できるが、スカスカで、触ろうとするものをいたずらに切りつける、反省もできない。不便なのに、中途半端にきらめいてしまうから、中途半端に愛してしまう。ただし気をつけろ、庭師はガス状だ。立ち止まっている間にすり抜けてくる。


 そのため、私は奴らに気づかれないように箱に隠し、持っているだけの鍵を掛けた。奴らガスだが、隙間が無ければすり抜けられない。そうなると、奴らはもう鍵の掛かった中身は何も見えないし、あの錆びついて刃こぼれもひどい、幼いハサミで刈り取ることもできない。そうすると、箱にハサミを立てながら笑い始めるのだ。もちろん、ハサミなんかでは到底、どうすることもできない箱を用意した。決して刃は通らないし、箱の中を覗くこともできない。錠前はゆっくりと確実な手つきで操作すればすぐに開くが、ガス状の手のひらはおぼつかず、ひとつも開けることは出来ない。奴らがハサミを投げ捨てて錠前の数字とピンを冷静に見つめない限り、ひとつもびくともしないのだ。


 しかし迷宮では玉座が多い。多くの照らす光があり、その数だけ、明かりに相応しい数の庭師が追従している。私が思うに、こんな、"薄っぺらい鍵ですら、まず箱にハサミを叩きつけるような"庭師が、増えてきた。

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