神なんて信じない
すっごいやる気です
フェンリル戦を経て、大怪我を負った弘樹。
しかしその傷は信じられない速度で治癒したのだった。
そして日をまたぎ、翌日の朝。
弘樹の日常は壊される。
「ギィイイイイイ!!」
「うるさい」
ズバンとものを切り裂いた音、悲鳴にも聞こえるその声は当然人間のものではない。
真っ二つに切られたそれは黒い表皮を持ち、尖った尻尾までついている。
俗に言う悪魔と呼ばれる存在だ。
そしてその悪魔を一閃のもとに切り伏せたのは誰でもない、この家の現在の主、弘樹である。
「ギィ...ィィ」
悪魔はしばらく痙攣を起こし、そして灰になり消えていった。
現在の時刻は午前九時、弘樹が起きたのは午前七時だ。
その二時間、弘樹は既に三体もの悪魔に襲われていた。
一体目は起きた直後に現れた。
いつもの精神状態ならパニックになっていたかもしれない。
しかし、当然寝起きなので頭は働いていない。
彼は呆然と悪魔を見ているだけだった。
悪魔は先ほどと同じような叫び声を上げて襲いかかった。
丸腰の弘樹、しかし彼が腕を一振りするだけで悪魔は真っ二つになったのだ。
そして現在に至るわけだが...。
「襲われる理由がわからん...てかこいつらなんだよ」
自身の体の変化をいとも容易く受け入れ、それより自分を襲ってくる輩に興味を抱く。
弘樹は普段は几帳面ではあるが、時々今のように大雑把なことあるのだった。
「んん...もういいや、また襲ってくれば真っ二つにすればいいし、今は腹減った。朝飯だ」
弘樹はリビングに向かう。
一歩一歩進む度にキッチンから何か音がしてることに気づく。
弘樹の家には普段姉の舞衣がいるのだが、今日は友達の家に泊まりに行っている。
ということは現在弘樹しかこの家にいないことになるのだが、現にドアの向こうには誰かいるようだった。
研ぎ澄まされた感覚、それによって壁の向こう、隣の家の人の気配まで感じる。
明らかに知らない気配、弘樹はそのドアをゆっくりと開ける。
人影は見えた、
しかしその瞬間、弘樹はドアごとふきとばれ、意識を失ってしまったのだった。
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「んがぁ!?」
目を覚ますとそこはリビングのソファの上だった。
俺は起き上がろうとするが、全身に走る痛みのせいでソファに落ちてしまった。
何があったのか、それは少しづつはっきりと思い出す。
俺はドアの隙間から誰が何をしてるのか見ようとしたのだ。
だが開けた瞬間、そのドアが勢いよく吹き飛び、その衝撃を真正面から受けた俺は玄関にまで飛ばされた。
誰がいたのかはわからない、ドアの吹き飛ぶタイミング、これは中にいたヤツの反撃だったのだろうか。
「...いてて、顔面も強打しちまったみたいだな...」
「これ使ってください」
「ん、ありがとう...」
俺は手渡されたタオルを受け取り、顔を拭いた。
ひんやりと冷たさが痛みを和らげ、とても気持ち......、
「...って誰だぁ!?お前!!」
何気なく手渡されたので違和感を全く感じなかった。
当然この家には人がいるはずはないのだ、
しかし俺が寝ているソファの横には確かに人がいる。
そこいたのは...
「すみません、自己紹介が遅れました。私はロキ、神をやっているものです」
「...へ?」
この日を境に俺は神を信じなくなった。