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俺の親が神さまの敵なんだが  作者: トミー
日常を侵食する闇
22/24

決断

堕天使コカビエル、

堕天の王ルシファー率いる組織の幹部、


「せっかく最高の舞台を用意してやったのにしらけさせるなよなぁ?」


背中には漆黒の6枚の翼、翼の枚数はその者の魔力の強さを表す。


6枚とまでいけば大天使とも呼ばれるほどの強者の証、神に仕えるものでありながら神と同等の力を得た者たちだ。


「弘樹さん!!」

ロキは壁に叩きつけられたぐったりとしている弘樹の元へ走る。


既に人の毒となっていた魔力の霧は晴れた、もはやロキが浄化する必要も無い。


霧が晴れた理由はフェンリルの能力の発動によるものであろう。


雫と思出にあっては既に満身創痍の状態だ。


雫は震える足を押さえていた。


その震えは恐怖からくるものか、それとも疲労によるものなのかおそらく両方であろう。


思出も同様に体力の消耗が激しい。


時を止めるという強力な能力を持つ思出は、能力発動に体に対して相当な負担をかける。


これは雫の能力の代償と同じ世界の修正力によるものだった。


「あと何回行けそう?思出くん。ちなみに私はあと弾丸3発が限界かな・・・」


「・・・不甲斐ないが俺もあと2回が限界だ・・・。それまでにあの二人を制圧しないと」


この2人は人間屈指の実力者ではあるが、連戦による体力の消耗に加え、弘樹という戦力が欠けた以上勝ち目は無いに等しい。


フェンリルの神殺しを止めるすべもなく、コカビエルを倒す手段も思いつかない。


しかし諦めるわけにはいかない。


「まぁやれるだけのことはやらないとね、後輩達に笑われたくないし・・・」


雫は手に握る拳銃をコカビエルに向けて構える、腕が震えていて照準が合わない。


それでも構え続ける。


裏の世界で人間を守ってきた組織のリーダーは伊達じゃない。


最後まで足掻き続けると覚悟に決めていた。


コカビエルは笑った。

「ククッ…最後の悪足掻きのつもりだろうがぁなぁ!?上位天使の俺に銀の弾丸が通用すると思ってるなら大間違いだぜ?」


思出も残り少ない体力の中、剣を構える。


「残念だが、人間様は諦めが悪いんでな?てめぇの首が落ちるまで一生諦めねぇぞ?」


「きひひひひひひっ!わらえるなぁ!!諦めないのがなんだってんだァ?結果は変わりやしねぇ!お前らはここで死ぬ!それはゆるぎはしねぇんだよぉ!!」


コカビエルは翼を大きく広げた。


その瞬間、翼から漆黒の羽根1枚1枚が空中に撒き散らされる。


「知ってるかぁ???天使の羽1枚1枚は魔法陣を必要とせず飛行を可能にするほどの魔力が込められている。

じゃあこの魔力を攻撃に転用すると果たしてどうなるでしょうかぁ???」


無造作に浮いていた黒羽根1枚1枚がコカビエルの合図とともにその全てが指向性を持ち、雫たちに向かって放たれた。


「まずい!!」

その出来事はまさに一瞬であったが、雫たちは既に退避行動に移っていた。


凄まじい速さで撃ち出された羽1枚1枚は、地下空間を覆い尽くすほどの量。


魔力を帯びる羽は高密度に練られた魔力弾にも匹敵するものだ。


つまりは・・・。


ドーム内を揺らすほどの振動と爆発音、


黒煙があたりを包み、地面に炎が焼き付いた。


雫たちが立っていた足場は無残にも消し飛び抉られ、そこに彼女らの姿は無かった。


コカビエルは高笑いを上げていた。


既に戦えるものはおらず、残っているのは戦闘不能の人間一人と戦えぬ神のみ、あとはフェンリルの「神殺し」の完全覚醒を待つだけだった。


「くひひ…」


フェンリルの能力が完全に解き放たれた場合、人の世のみならず、神の世界にも終わりが訪れる。


ラグナロクの再演となる。


「世界をリセットするにはこれが一番手っ取り早い…これで我らが長ルシファー様もお喜びになる…!」


フェンリルはその能力で地下空間の天井を突き破らんとしていた。


残されたロキは必死にフェンリルの名を呼ぶが、反応はない。


凄まじい魔力の余波と地下空間の崩壊による揺れ、そして何よりコカビエルのおぞましい高笑いが弘樹を現実に引き戻した。


体の隅々に痛みを感じる、頭も霞かかったようで思考がまとまらず、自分で立ち上がることも出来なかった。


「…目が覚めましたか!?一旦引きましょう、私たちではもう彼らを止められません!地上に出て応援を呼ばないと何もかも手遅れになる!」


ロキは弘樹を抱えながら崩落しつつある空間の出口をめざして歩く。


出口まではそれほど遠くなかったが、弘樹を抱えているのと崩落の影響で足場が悪く、なかなか進めない。


弘樹が気絶していたのは数分、全ての状況を理解してはいなかったがただ一つ分かっていることがあった。


「・・・ここでアイツらを止めないと」


弘樹は力の入らない足で必死にロキの歩みを止めた。


「・・・ここで逃げて応援を呼ぶって言ってたよな…俺を抱えてたら応援が到着する前にフェンリルは完全に覚醒しちまう。止められるのは今だけなんだろ?完全に能力が覚醒していない今だけ」


フェンリルの魔力は増大し続けているが、まだ体内に魔力を溜め込んでいるだけで外に吐き出してはいない。


だからこそ、力の大半が眠っている今がチャンスだった。


しかし、


「・・・そうかもしれません。でも弘樹さんを置いていけないですし…私は存在を保つだけの魔力しか残ってないのでもう戦えません。弘樹さんもまともに立てない状態じゃないですか!」


神は魔力を人間界で補充することが出来ない。


1度使えば回復できず、存在を保つためにも魔力を必要とするためロキにこれ以上の戦闘は無理だった。


そして弘樹も聖剣を使う体力は既にない。


「…いや、まだ何かある。不思議と絶望はしてない。はっきりとしないんだが何かこう…他に方法があるような気がするんだ…」


ある種の直感とも言えるもの、命のやり取りが行われる現状においてはあまりにも薄い希望、


それでも弘樹はそれを信じて疑わなかった。


「ロキ、実はもう思いついてるんじゃないか?あの堕天使を倒しつつ、フェンリルを引き戻せる奇跡的な何かを…」


ロキは弘樹の問いに対して、すぐには返事をしなかった。


その間が弘樹の直感の裏付けとなった。


「…ないことにはないです。ただ、確実にフェンリルを救えるとも限りませんし、堕天使を倒せるとも…。そしてこの方法を使えば、私は数日間動けなくなる上に弘樹さんの体の安全まで保証できません」


「それでもいい、俺は覚悟できてる。俺たちは今やれることをやろう」


ロキは一瞬驚いた顔になったが、すぐにいつもの笑顔に戻った。


「分かりました!では覚悟してくださいね!」







■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫▪





とうとうフェンリルの巨体が天井を突き破り、それと同時に地下空間の崩落が完全に始まった。


大小様々に岩が空から降って下り、その空間に安全な場所はもはやなかった。


「さて、やっと現世へお披露目だ。さらに大きく、さらに破壊しろ!フェンリル」


コカビエルは既に勝利を信じて疑っていない。


計画も最終段階に入り、それを邪魔する者も排除したのだ、完璧と言ってもほかない。


その余裕が普通なら生むはずのない隙を生んだのだった。



コカビエルの視界に鮮血が飛び散り、それと同時に後頭部に強い衝撃を受け、地面に叩きつけられる。


(一体何が!?斬られたのか???この俺様が???)


胸あたりに横長の切創から血が滴っている。


本来この程度の怪我であれば、数秒あれば回復するのだが、この傷はそうはいかなかった。


絶え間なく流れる血、傷が閉じようとするその部分がさらに燃えるように熱くなる。


(これは…浄化の魔力!!傷が治らねぇ!!)



コカビエルは傷を手で抑え、ふらつきながら立ち上がった。


土煙が漂う中、人の影が1つ揺らぎながら煙に写る。


姿をよく見えないが、魔力感知でコカビエルは理解した。


これは、自分と同等の存在だと。


「貴様ァ!どこから湧きやがった!?」


魔力により吹き荒れる暴風、砂塵が吹き飛ばされ、その姿があらわになる。


紫色に光り輝く瞳と髪、魔力により形成された衣により全くの別人に見えたが、それは確かに弘樹の姿だった。




その神々しい姿からは、ロキの特徴が垣間見える。



「…お前を倒して、フェンリルも止める!」




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