時操剣
俺の目の前には10人を超える武器を携える敵たち、全員俺を殺す気で向かってきている。
だが、あの時のように…
フェンリルの時のようにはいかない。
右手に意識を集中、それとほぼ同時に足に力を込める。
そして、出現した剣を振るう。
3、4人を斬り抜け、振り返り剣を持ち構え、さらに追撃。
2人を斬り伏せ、相手の様子を伺う、すると敵の動きが変わった。
俺を取り囲むかのように四方に散り、タイミングを変えて攻撃をしてくるつもりだろう。
こうなれば1人づつ倒していかないといけない、一瞬の隙が命取りになる。
集団リンチの上、殺されたくなければ自らの感覚を研ぎ澄まして、最速最短で敵を倒せ。
1人目、上段に斧を振りかぶる大男、男よりも素早く懐に飛び込み、空いている右脇腹を斬り抜け、
2人目、俺の右側から槍を構えて突っ込んでくる、剣を振り終えた状態の俺だが、手首を返し、槍の横腹を弾き、軌道を変えた上、腹に痛烈な蹴りをかました。
3人、4人と次々にくるが、攻撃をかわし、斬り裂き、殴り、蹴り、時には投げたり、直感に身を任せ、敵を全滅させた。
多少息は乱れたが、動けないわけではない、あれだけの動きをしていてこれだけで済んでいるのは、やはりエクスカリバーの力の恩恵だろう。
俺の身体能力のみではなく、全体的なステータスが上がっているようだ。
「やはり雑魚ではダメですね」
部屋の奥の方から男の声が聞こえた、奥から現れたニット帽でダウンを着込む中年の男、
「私の能力、モブ生成こと複製、物量で押し込む戦い方を好んでいます、しかしこうもあっさりと突破されるとは…」
男が話し終わる間も無く、俺は相手の首目がけて剣を振るった。
その速度は常人では反応できない、だがここはバインダーの本拠地だ。
衝突する剣と剣、俺の目の前には中年の男…ではなく、銀髪の男、こいつは一体。
「思出守、バインダーの一人だ」
まるで心を読んだかのように自らの名を名乗った男、その瞬間、俺の剣は上に跳ねあげられた。
(やばい!!)
俺はバランスを崩し、防御する術を失った。
斬られる、そう直感した。
だが、思出守は反撃することなく、その場で剣を構え直した。
「助かったぜ〜思出君よ」
「 副次さん、あなたは後衛向きの能力だ、あとは俺に任せるんだ」
そう言われた副次はそそくさと奥の部屋へ逃げていった。
再びあの能力を使われるのは厄介だな。
未だにこの状況が何なのかは理解できていないが、まだ命の危険が無くなったわけではない。
今は、目の前の男、思出守に集中だ。
「さて、お前の聖剣と俺の時操剣、力比べと行こうか」
思出守は剣を斜に構えた。
それだけ、たったそれだけの行動のみで重圧が俺を襲う。
「あんた相当強そうだな、それに時操剣?ただの剣ではないわけか」
「時間を操ると書いて時操剣、俺の記憶が織り成す魂の武器、貴様の付け焼き刃では破れんよ」
「そうかい!!」
俺は勢いよく飛び出したが、今までとは違う。
直線的ではなく、相手を翻弄するため幾度とフェイントを織り交ぜる。
その速度相まって残像がさらに相手を惑わす。
対して思出守は、剣を1回、2回、3回と何もないところに振るったのみ、動く様子は無かった。
そして4回目、剣を振るった後の僅かな隙、俺は思出守の背後に一瞬で回り、剣を振るった。
しかし、俺の剣は思出守に届くことは無かった。
「ぐっぁああああ!!」
全身に鋭い痛み、これは斬られた感覚だ。
血しぶきが舞い、俺はそのまま力なく崩れ落ちた。
「時操剣、停滞する斬撃、力だけでは勝てないのは身に染みたかな」




