わからないよね
昼になっても株価は上がる気配がない。
現在は二百三十五円。
このあたりで手を打つか。
すると、後場が始まると、買い戻しが始まった。
「ほらほら、安くなった途端にどーんと買いだしたじゃん」
株価はスルスルと上がっていく。
先日のようにどんどんと上がってはいかないけど、それでもスルスル、二百四十二円。
そうよ、その調子。
二百六十円じゃダメ。
もっと儲けなければ。あわてて東進さんに電話。
「やはり、今日はまだ売りません」
「そうですか、上がってきましたものね」
「ええ、月曜日にまた考えます」
「わかりました。他の株はいかがですか」
「そうね、今から考えます」
「よろしくお願いします」
そうよ、三十万のうち半分くらいまだ残ってるんだったわ。手数料を覗いて十四万円くらいか。何にしようか。株主優待の本を見てみよう。
「アクセサリーが株主様に三割引きの優待券」
「クオカードが五百円」
「自社製品詰め合わせ」
いろいろあるなあ。でも、どれも高いなあ。重工業の株は意外と高い。車もいいけど手が出ない。家電製品関連はテレビが足を引っ張ってちょっと危ないかも。ケータイもいいけどまだ上がるのかなあ、高値で買うことになるよね。
安くて株主優待がいいのはないかしら。旅行会社もいいかも。これから旅行者が増えるかもしれないし。それとも不動産が固いかなあ。
ピンポーン。
「誰だろう」
インターホンを見ると、そこには宅配便のお兄さん。
「はーい」
印鑑を持って玄関を開ける。
「お届け物です」
あ、先日買ったテレビ通販の鍋だわ。忘れてたっけ。この鍋がいいのよ。保温鍋。カレーなんか作っても煮込むのに時間がかかる。これは沸騰したらルーを入れて溶かした後、この鍋に入れるだけ。あとは火も使わずに置いておく。つまり、魔法瓶なのよ、構造が。
これで安心して株価を眺めることができるってわけ。株価を眺めるつもりで買ったんじゃないけど、いいものを買ったわ。
そうね、シチューにするか、夫の給食は親子丼だったわね。
ニンジンにジャガイモ、鶏肉に、タマネギ。そうそう、コーンの缶詰もあったわ。適当に切って沸騰したらルーを入れて牛乳を足す。また、火にかけた後、この保温鍋に入れる。これでよし。
○○工業は、一円アップ。小刻みね。もっとストーンと上がりなさいよ。
この日の株価は二百五十六円まで戻してきた。
月曜日はどうなるかな。
掲示板を覗く。
『よっしゃー、もっと買うぞ』
『やはり、今は黙って待つ』
『あーあ、昨日売っていたらよかったな。でも、今日ぎりぎりで売って儲けたー』
そうか、微妙な感じだな。
月曜日に期待するしかないな。
きっと、まだ、上がる、上がりますとも。
「ただいま」
「お帰りなさい」
「おおおおお!!! いいねえ」
そうだ、着物着ていたんだ。
「そうでしょ」
「着物はいいよ。断然着物」
そうか、そんなにいいか。儲けたら着物を買うか。
相変わらず取らぬ狸の皮算用。