いよいよだわ
東進さんから書類を受け取り、ついに銀行からハラホ証券に金を振り込む。
へそくりの三十万円。
これで私も株を買うことができる。
いそいそと帰って早速パソコンを開く。どれにしようか。あのノーベル賞関連がほしい。○○工業にしよう。だってさらに五円アップしてる。
百六十二円か。これを千株。
東進さんに電話しないと。
「もしもし、ハラホ証券ですか。花村と申しますが新堀東進さんはいらっしゃいますか」
「はい、少々お待ちください」
「もしもしお電話代わりました。新堀です。花村さんの口座にお金が入りました」
「買いたいのがあるんです」
「なんですか」
「○○工業」
「やはり買いますか」
「ええ、いい感じで上がってるもの」
「指値はいくらにしますか」
「指値って?」
「お買いになりたい金額です」
「いくらにしたらいいの」
「いや、それは花村さんが決めるので」
「あ、じゃ百六十円を切ったら」
「百五十九円ですね」
「うん、そうする。待ってる間に上がると買えないもの」
「何株にしますか」
「千株」
「では既定の手数料がかかりますが、花村さん百五十九円の指値で千株申し込みます」
「お願いします」
もう少し高くいえばよかったかしら。ケーブルテレビの株のチャンネルを初めてつける。今まで全く見なかったチャンネルが異様に興味がわいてくる。これって不思議。買うつもりになった途端にすごい面白い番組に変身するのね。
パソコンも見たことなかったファイナンスのページに首ったけ。
電話が鳴った。
「もしもし、花村さんですか。ハラホ証券の新堀です。今よろしいでしょうか」
「ええ、どうでした?」
「はい、購入できました」
「やった!」
「ずいぶんと勇気のある買い物ですね」
「ええ、これは気になってたの」
「ありがとうございました」
さてと、これで株主よ。百五十九円で買っていくら儲けるかしら。十五万円以上の買い物をしたのに全く動じていない。私って向いているのかもしれない。ショッピングで高額の買い物は車やエアコンとかしかないのに。目に見えない株に簡単に金を使うってどうなんだろう。でも、値上がりすることしか見えていない。買った満足感でいっぱい。買い物に行きすき焼きをしようと肉を買う。気持ちが大きくなっている。
だが、買い物から帰ってパソコンで値段をチェック。
上がってる!
現在百六十五円。
うわあ、この調子だとあっという間に倍ぐらいに行くんじゃない。
スキップして庭を掃除する。
ときどき指を眺めながら、ダイヤもいいかなと呟いてみる。