表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/14

そんなぁ、なぜなの?

 午前様のご帰還。

「おかえりなさい」

「ただいま」

「どうだった? うまくいったの?」

「とんでもない。授業中にまーくんがお腹が痛いって下痢を漏らしちゃって大変だったよ」

「え? どちらもかわいそうね」

「ああ、教室中が匂うし、まーくんは泣くし、先生方が助けてくれたって、もう気持ちが飛んじゃってるし。とんでもない一日さ」

「そうだったの」

「でも、いいこともあるんだ」

「なあに」

「みんなが優しくてね、誰もからかう子がいなかったんだ」

「まあ、それはすごいわ」

「うん、いいクラスだねってほめてもらえたさ。授業は全然進まなかったけど」

 そのあとは恒例の打ち上げで、みんなすごい一日だったってそれなりに宴は盛り上がったみたいね。そういう子どもに囲まれて幸せなおじいちゃま先生ね。よかったじゃないの。

 ぶつぶつつぶやきながら金利は満足そうに寝息を立てている。

 私の投資の話を聞かせたかったけど、まあ明日もあることだし。


 翌日、二日酔いで青い顔して夫は出かけて行った。

 私は二匹目のどじょう狙いで株主優待を見る。

「どれもいいじゃないの」

 早速電話する。

「花村です」

「おはようございます。昨日は利益が出てよかったですね」

「ありがとうございます」

「僕も勉強になりました。花村さんすごいですよ」

「あら、そうかしら」

 ちょっと褒められると木にも登りそうだわ。

「あの、新しい株を買おうと思って」

「はい、どちらのですか」

「不動産の会社の株主優待がとても魅力的なの」

「どれですか」

「デワホーム」

「ああ、今は七百七十円ですね。百株からです」

「それをお願いします」

「いくらで買いますか?」

「今、ほしいの。だから七百七十円で」

「あ、そうですか。わかりました」

 電話を切って三分。

「買いました。七万七千円です」

「ありがとう」

 ここの株はリゾートホテルの半額優待券が二枚もついてくるのよ。これって魅力よ。全国にあるみたいだし。

 でも、あっさり買うのは理由があるの。十月で確定だから急がないとね。本で見ただけでもいいのよ。株主優待欲しさなんだから。売る気はないの。

 どれ、パソコンを開いてみましょう。

「デワホームは最近がいいのね。つまり高値で買ったのか。失敗だわね。でも、優待券欲しさだからいいわ」

 もともとは五百円くらいだったのが、七百七十円ってことは、ひょっとしてあとは下がるだけ?

「いいのよ、お金は儲けから払うんだから」

 どれ、掲示板はなんて書いてるかしら。

『ほい、儲けさせてもらいましたよ』

『今売りですね!』

『五百円で買っといてよかったなあ』

『今買う人がまだいるぜ、あほやなあ』

 うううう、私のことかしら。

 え? 下がるの? 本気?

 株主優待欲しさでも下がるって気分悪いわ。後場になればいいかも。


 後場、ストップ安です!


「おおおおおおお! どんだけ下がるの!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ