なだらかな曲線美
月曜日。
朝礼があるとかで、夫は朝早くから出かけて行った。心臓に悪い連休だったわ。とにかく、どんどん上がってもらわないと。
パソコンがフリーズ。
どうしちゃったわけ?
急に固まって動かない。
「困るのよ、株価がわかんないじゃない」
そこで、東進さんに電話。
「もしもし、どうですか?」
「おはようございます。今のところ下がってます」
「やだー!、いくらなの?」
「今は二百三十八円です」
「やっぱり売りかなあ」
「そうですね、動きが緩慢になってきましたからぐっと上がる気配はないようですね」
「そうか、じゃ、売るわ」
「いくらにしますか」
「二百六十円にしたいんだけど」
「わかりました。では一応その値段で申し込みますね」
「無理かなあ」
「少し下げた方がいいかもしれません」
「じゃ、二百五十九円」
「その方が売れる確率は高いですね」
「お願いします」
さて、動かないパソコンをどうするか。コードを抜いて差し込んでもう一度初めから。
「お、動き出した。ウイルスやバッテリーをチェックだというところに印が」
でも、今は株価を見る。あとでチェックするから。
「おう、上がって来た」
現在は二百四十二円。この前みたいにストップ高にならないのかしら。なんだか遅いのよ、うちのパソコンの所為かも。それはないか。
昼にはそれでも、二百四十九円。
よしよし。
では、これで売れるとしてほかに何を買おうかな。株主優待で魅力的アクセサリーのオリジナルペンダントをくれるって書いてる。ほう、一万ぐらいかしら。これっていいよね。
「最近ペンダントをつけてお出かけだなんてしたことない」
十八金のペンダントって一つしか持ってない。その一つすら全く使ってない。あとは安物のアクセサリーばかり。清水の舞台から飛び降りる覚悟で買うか。
東進さんんに電話。
「あの花村ですけど、アクセサリーの山々屋を買いたいんですけど」
「え? 東証一部ではないですね」
「あ、そうね、ジャスダックって書いてるわ。株主優待がいいのよ」
「そうですか。でも、お売りになりたいときに東証一部ほどには買い手がつかないかもしれませんが、よろしいですか」
「そういうものなの?」
「ええ、今、ここの株は買われてませんね。売り注文はいくつか出てます」
「うーん、もう一度考えるわ」
「現在、○○工業は百五十円です」
「ゆるーく上がってるわね」
「売り注文はかなり出始めました」
「あら、そうなの? まだ、ノーベル賞ももらわないって決まってないのに」
もっと売値を下げようか。でも、私は十万の利益は確定したいのよ。
「もう少し待ってみますか?」
「ええ、そうするわ」
東進さんの言葉を聞くと、アクセサリーの株への気持ちも揺らいでくる。東証一部で探してみよう。
本日の株価は二百五十五円。
なだらかな曲線美ね、まるで寝ころんだ私みたい。
あと、もう少し。明日まで待ってみよう。二百五十九円まであと四円だもの。




